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懲役13年で服役中のある性犯罪者の告白

4/27(金) 22:39配信

創

懲役13年の判決に「人生が終わった」と

〈はじめに〉
 ここに掲載するのは、性犯罪で懲役13年の刑を受け、服役中の受刑者が書いた手記だ。周知のように性犯罪をめぐっては2017年に刑法が改正され、厳罰化がなされたと言われている。ただ、その一方で、薬物依存と並んで性犯罪についても、処罰だけでなく治療を行う必要があるという声も多い。実際、刑務所でも様々な取り組みが始まっている。しかし、具体的にどんな取り組みがなされているかについては、ほとんど知られていない。
 今回の手記を書いた受刑者が受講している「R3」というプログラムは2006年から刑務所に導入されたものだ。この取り組みは、2004年の奈良女児殺害事件がきっかけになったもので、その事件を起こした小林薫死刑囚(既に執行)はちょうどその2006年に『創』に手記を連載していた。その点でも性犯罪へのこの取り組みは本誌と関わりがある。
 読者にとってはやや専門的だと思える部分もあるかもしれないが、性犯罪について語るにあたって、この取り組みについての理解は不可欠だと思う。そういう思いから今回、この手記を掲載した。(編集部)

 懲役13年の判決を宣告されたとき、「人生が終わった」と感じました。「こんな長期の刑を科されるほど酷(ひど)いことはしていない」と加害責任を否認し、「13年も服役させられたら、更生できるものもできなくなってしまう」と、刑事司法制度を批判しました。塀の中での13年という時間の重みを想像できなくて、自分のほうが被害者であるかのような思考に陥っていたのです。
 何の落ち度もない被害者の人生を決定的に傷つけておきながら、自分の人生を守ることで精一杯になっていたなんて、鬼畜にも劣る卑劣漢だと非難されて当然です。しかも当時の私は、自分が身勝手で、ものごとを自分に都合よく解釈していることさえ自覚できていませんでした。
 こうした歪んだ思考のことを、性犯罪治療では「認知の歪み」と呼び、徹底的な修正が求められます。一般的に性犯罪は、性衝動の高まりや、偏った性的嗜好が原因と理解されがちですが、実際には、認知の歪みや親密な対人関係の不足、不適切な情動統制の習慣、共感性の不全などの要因が、複雑に影響しあって発生する行動だと言われています。こうした性犯罪につながる様々な要因(リスク)に対し、認知行動療法などの科学的アプローチによって介入を行い、再犯を防ぐための新たな行動様式を習得していく取り組みが「性犯罪治療」です。
 2017年7月、性犯罪の厳罰化などを盛り込んだ改正刑法が施行され、メディアでも大きく報じられました。以前に比べれば、被害の実情に沿った刑罰を科せられるようになりましたが、個人的には、性犯罪が蔓延(まん えん)する社会の現状は変化しないだろうと感じています。刑法が影響を与えられる範囲は「被害の事後」に限られており、加害の抑止という点ではほぼ無力だからです。そもそも、事後対策ばかりに目が向いて、加害を防ぐ対策が疎(おろそ)かになっている時点で「加害者の思うツボ」です。事後対策の拡充と並行して、加害を未然に防ぐ対策も強化しなければ、「未来の被害者」は守れないのではないでしょうか。
 加害者に治療や更生の機会を提供することは、「加害者支援」に映ってしまうのかもしれません。被害者支援も不十分な中、加害者に手を差し伸べるなど時期尚早だというご意見もあろうかと思います。しかし性犯罪は被害者に、長期にわたって深刻かつ広汎なダメージを与え続ける極めて悪質な犯罪です。加害者の分際で恐縮ですが、性犯罪対策は「事後では遅い」と思います。
「加害者に恩恵など与えてたまるか」と考えるのか、未来の被害者を無傷のまま守ることを優先するのか――。社会で議論していただきたいと願っています。

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最終更新:4/28(土) 22:14

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