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原発ゼロを進めるドイツで深刻な「電力不足」が発生

4/27(金) 10:00配信

現代ビジネス

寒い冬がようやく終わり

 今年は桜の季節に日本で過ごせると喜んだのもつかの間、これまでに無くひどい花粉症に悩まされた。しかし、花粉もようやく下火。暑くも寒くもない良い季節がやってきた。

 今、日本は新緑の若葉がきれいだ。東京を歩いても、道路脇にさりげなく植え込まれたツツジが満開になっていたり、どこかの家の塀からレンギョウが垂れ下がっていたりで、街中のそんな花々を見るたびに、なんと美しい季節かと感動する。

 冬が長く厳しいドイツでは、5月に春が突然やってくる。果樹としての桜や桃が一斉に花をつけ、丘一面が白い霞のようになって、こよなく美しい。

 この時期ドイツでも、白樺やらハーゼルナッツなど様々な花粉が飛び、皆が悩まされるのは日本と同じだが、それでも春を待ちわびた人々の喜びは果てしない。モーツァルトの有名な「五月の歌」も、単純に春の喜びを表した歌曲だ。

 ちなみに、今年の2月、ドイツは記録的な寒さだった。2月末には、比較的温暖なシュトゥットガルトでも、気温が昼でも氷点下から上がらない日々があった。零下10度を過ぎると、風に向かうと顔が痛い。たくさん着込んで、携帯カイロをくっつけていても、腿のあたりがジンジンと冷えてくる。

 とはいえ、ちょっと雪が降ると、高速道路が閉鎖になり、人々がすってんころりんと転ぶ日本とは違い、ドイツ人が寒さに強いことは確かだ。長年の勘もある。

厳冬期ドイツの電力不足

 さて、今年の冬はそのドイツで不思議なことが起こった。ドイツ全土で時計が遅れたのだ。テレビや食器洗い機などに付いているデジタル時計である。

 こういう、コンセントにつながっている電気器具に内蔵されている時計は、電気の周波数を利用して時を刻んでいる。ところが、本来、正確であるはずの周波数が落ちたため、時計が遅れてしまったという。

 実は、私も自宅の電子レンジの時計が遅れていることに気づいて、もうすぐ電子レンジが壊れるのかと懸念したのだが、そうではなかったらしい。数日で6分も遅れたというから、ラジオ内蔵の目覚まし時計などを使っていた人は、電車に乗り遅れても不思議はなかった。

 では、なぜ、周波数が落ちたかというと、流れる電気の量が減ってしまったからだ。なぜ、流れる電気の量が減ったかというと、電気が足りなかったからである。電流が落ちると、電圧も周波数も下がる。それを一定の範囲に収めるために、電力会社は常に発電量を調節している。

 ドイツは現在、2022年の原発ゼロに向かって原発を止めようとしている。2015年6月に1基止めたのに続いて、去年の12月31日に2基目を止めたが、両方とも、産業の盛んな南ドイツの原発だ。

 寒い国であるドイツでは、夏よりも冬に電力需要が増える。太陽光の発電施設は多く、普段は太陽が照ると電気が余りがちだが、冬は陽があまり差さないので、ほとんど役に立たない。さらに不都合なことに、冬は凪が多いので風力発電まで止まってしまうことがある。

 厳寒となった今年は電気が足りなくなり、待機していた国外の火力まで総動員されたが、それでも供給はカツカツだった。普段なら周波数の揺れなどすぐに調整できるそうだが、今回はそれどころではなかったらしい。

 昔、私が子供だった頃は、急激な経済成長に電気の供給が追いつかず、ときに電球が揺らめいたことがあったが、現在のような高度な社会では周波数の揺れなど許されない。電圧や周波数が不安定になると、精密機械が故障するし、緻密な製品にムラが出る。

 メルケル首相は最近さかんに「EUの電力統合」ばかり言っている。早い話が、EU国家間の送電線を強化して、電気のやりとりのパイを増やそうということだ。これからさらに7基の原発を止めれば、電力不足が深刻になるのは想定済みなのだ。

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最終更新:4/29(日) 10:25
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