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MIYAVIがhide「ピンクスパイダー」をカバーする意義 “音楽”を開拓してきた二者の共通点を探る

4/30(月) 13:01配信

リアルサウンド

 hideがこの世を去って20年目の春、あるニュースが飛び込んだ。MIYAVIが現行のツアー『“DAY2” World Tour 2018』で「ピンクスパイダー」をカバーしたのだ。さらに、6月6日にリリースされるトリビュートアルバム『hide TRIBUTE IMPULSE』にも同曲で参加する続報も届いた。

 MIYAVIは今や、ミュージシャンとしてだけではなく、俳優、モデル、UNHCR親善大使としても、世界中を飛び回る日本を代表するアーティストだが、そのキャリアのスタートはヴィジュアル系バンドのギタリストだった。当時は、バンド解散後にソロで活動を始めたギタリストという境遇や、カラフルな衣装を好んでいたファッション、また、YOSHIKI、SUGIZO、GACKTで結成されたバンドS.K.I.N.に参加したことなど、hideを彷彿とさせるところがいくつかあった。とはいえ、MIYAVIに限らず、ヴィジュアル系でhideの影響を受けていない者などいないだろう。それほどにhideの存在は大きい。それでも、どうしても、他でもないMIYAVIにはhideを重ねてしまうところがあると、筆者には感じられる。hideと共通する何かが、MIYAVIにはあるのだ。

■hideが持っていた“遊び心”
 ヴィジュアル系のシーンはX JAPANが牽引してきた。そのギタリストであるhideは、いわば、ヴィジュアル系の基礎を作ったアーティストと言っても過言ではない。しかし、hideのソロ作品は、多くの人がヴィジュアル系と聞いて思い浮かべる、耽美で影があって重いというイメージとは、ひと味違うものだ。例えば、2ndアルバム『PSYENCE』(1996年)で見られるポップさは、ヴィジュアル系が持つダークなイメージとは対照的であるし、かと思えば、90年代半ばに、Nine Inch NailsやThe Prodigyなどと同時代性を感じるインダストリアルや、デジタルなサウンドを取り込み、レイ・マクヴェイ(ex.The Professionals)、ポール・レイヴン(ex.Killing Joke)らと共にzilchというユニットを結成。パンクも、メタルも、グラムロックも、ネオアコも、歌謡曲も、あらゆる音楽を机の上に広げて、次はどれで遊ぼうかと企んでいたのがhideなのだ。そうやって遊び心を持ちながら、リスナーの音楽体験を増やすことを意識的に実践していたのだと思う。

■記名性の高いMIYAVIのプレイスタイル
 MIYAVIが活動していた2000年代のヴィジュアル系シーンは、LUNA SEAや黒夢、またはDIR EN GREYらの影響を強く感じさせるバンドが多かった。そんなシーンの中で、エレアコをバシバシと叩きながら弾くスラップ奏法を武器に、ブルース、カントリーなどのアメリカのルーツミュージックから、ヒップホップまでもを取り入れたサウンドは、当時のヴィジュアル系シーンにないものだった。そうやってMIYAVIは、すでにできつつあったヴィジュアル系の様式に、新たな要素を加えてアップデートさせようと試みていた。

 2010年以降は、事務所の独立を機に、MIYAVIはさらに広い世界へと飛び出し、より強いオリジナリティを確立している。全曲ギターとドラムと歌のみで構成された『WHAT'S MY NAME?』(2010年)は、彼の代名詞でもあるスラップ奏法を駆使したプレイスタイルだからこそ成立する作品だし、7thアルバム『MIYAVI』(2013年)以降のエレクトロを取り入れた作品では、再びエレキギターを手に、時にダンサブルなリズムを刻んでフロアを躍らせ、時に鋭く尖った高音でオーディエンスと共に叫ぶようなギターへと進化を遂げている。ギターを、打楽器や己の声のように自在に扱うプレイスタイルは、ジャンルレスなミュージシャンとのコラボレーション作品『SAMURAI SESSION』(2012年、2017年)シリーズでも、ギターが鳴れば一発でMIYAVIだと分かるほどに記名性が高く、MIYAVIならではのものだ。

■hideとMIYAVIに共通するもの
 ちょうど10年前、MIYAVIはインタビューで「俺はやっぱhideさんのようにはなれないし。でも俺にもhideさんにできないものもできるかもしれない。生き方も、プレイスタイルにしてもそうだし、今それを模索しながら確立している最中」(『ROCK AND READ』018/2008年5月12日刊行/TOKYO FM出版)と語っていた。hideという圧倒的な存在があったからこそ、自分のオリジナリティとは何か、自分にしかできないことは何なのかを、MIYAVIはストイックに模索してきたのだろう。その中で、ギターをスラップするプレイスタイルが生まれ、ヴィジュアル系にブラックミュージックまでをも取り込んで新しいサウンドを確立させた。そうやって自身の音楽性をより豊かにすることで、リスナーの音楽体験の幅を広げようとしたところには、hideのDNAを強く感じる。

 さらに、現在のMIYAVIのグローバルな活動もまた、hideと通ずるものがある。前途した、hideのユニットzilchなどはまさに海外を視野に入れた活動だったろう。hideの企みの全貌を見ることは叶わなかったが、世界で活躍する日本のミュージシャンという夢はまさに、MIYAVIに引き継がれているのではないだろうか。音楽性やプレイスタイルこそ違えど、音楽に取り組む姿勢や精神にはやはりhideとMIYAVIは共通するものがある。 そして、一時はhideからもヴィジュアル系からも距離を置いたようにも見えたMIYAVIだが、独自のスタイルを確立した今だからこそ、hideの代表曲である「ピンクスパイダー」をカバーしたのだろう。

小川あかね

最終更新:4/30(月) 13:01
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