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若きローマが見せた成長の跡。望外のCL準決勝進出、リバプールを追い詰めた智将の修正力

5/3(木) 12:20配信

フットボールチャンネル

 2日に行われたチャンピオンズリーグ準決勝2ndレグで、ローマは4-2でリバプールに勝利した。だが、決勝進出にはあと一歩及ばなかった。1stレグを2-5で落としていた代償はあまりにも大きかった。だが、叩き上げの智将と新進気鋭の若手を揃えたローマは、リバプールを追い詰めて確かな実力と成長を示して見せた。(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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●決勝に一歩及ばず。ミスが響いて…

 1stレグで決したかと思われた勝負が、またも大接戦に。ローマは2日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)準決勝2ndレグで、リバプールのオウンゴール絡みとはいえ4点を奪った。

 ただそれだけに、悔いも残る結果となった。「PKに値するファウルが2つ見逃された。来季にはVAR(ビデオ判定)が必要だ」とローマのモンチSD(スポーツディレクター)は語ったが、審判のジャッジはともかく悔恨なのは試合内容も然り。前半に喫したつまらないミスによる失点が響いての敗退となったからだ。

 バルセロナ相手に見せた力を再び発揮した一方で、経験不足も再び露呈した。「選手たちが若く、私もCL初挑戦。自分の采配も含め、我われはミスを通して学ぶ立場にある」とエウセビオ・ディ・フランチェスコ監督は語ったが、準決勝敗退はその言葉通りのものになってしまった。

 ローマのパフォーマンスは、3ゴールを奪った後半はもとより序盤も良好だった。2-5という高すぎる授業料を1stレグで払った分、彼らはきっちりと修正を図ってきていた。

 システムを3バックから本来の4-3-3に戻し、モハメド・サラーに対してがら空きになっていた左サイドにきちんとフタをする。しかしそんな数字並べよりも肝心なことは、選手たちが思考とメンタルを切り替えてピッチに入っていたことだ。

 左右ともにウイングとサイドバックの2人を使ってリバプールの布陣を拡げる。中盤で相手が強烈なプレスを掛けてきても、怖気づくことなく少ないタッチでパスを交換。そして1対1の勝負でDFを剥がせると思った場面では、積極的に抜きにかかる。

 ゲーゲンプレスに面食らった1stレグとは打って変わって、実に勇敢なアプローチができていた。特に故障で欠場したケビン・ストロートマンの代役として出場したロレンツォ・ペッレグリーニと、左ウイングで先発出場したステファン・エル・シャーラウィは、それぞれ正確なパスや果敢な突破でチャンスを演出していた。

●悔いの残る詰めの甘さ。守備ではリバプールを封殺したが…

 守備でも然りだ。前述のようにサイドのスペースは閉めながら、多彩な動きで撹乱を図るリバプールの攻撃戦術にも対応。センターFWのロベルト・フィルミーノが中盤に落ちて前線のスペースを空けようとしても、センターバックはむやみについていかない。そこにサラーが走りこもうとしても、コンスタンティノス・マノラスがカバーする。

 そしてボールを奪うと、ディ・フランチェスコ監督は「押し上げろ!」と最終ラインにすぐさま指示を出す。こうしてローマは中盤でコンパクトな組織を作り、効率よくボールを奪取していった。この結果、先に間延びしたのはリバプールの中盤の方だった。

 しかし素晴らしい試合の入り方をした彼らは、手痛いミスを犯した。9分、中盤でラジャ・ナインゴランが痛恨のパスミスでボールを失う。リバプールのようにカウンターの速い相手にはそれが致命的となり、あっという間にローマの右サイドへ展開される。ローマの守備陣が戻りきれないところに出現したのはサディオ・マネ。ゴール前に走りこまれ、シュートを決められた。

 その後リバプールのオウンゴールで同点となるが、ローマにとっては25分の失点もなんとも悔やまれるものだった。コーナーキックの守備でエディン・ジェコがヘディングクリアにいくが、そこにフィルジル・ファン・ダイクが体を寄せ、クリアボールはゴール中央に飛ぶ。ローマの選手はジェコへのファウルだと自己判断し足を止めた。しかしプレーは流され、あとはジョルジニオ・ワイナルドゥムがやすやすとヘッドを決めた。

 ローマは失点シーンももちろんのこと、セットプレーにも詰めの甘さを残した。ゴールを奪おうと思ったら大事にしなければならないところだが、前半に4度得たコーナーキックは生かせない。押し込まれながらもリバプールの中央の守備そのものは堅く、前半はローマに枠内シュートを許さなかった。追い上げなければならない前半で、細かいプレイを詰めきれずに1-2。残念なところだった。

 ただその後、ローマの選手は気持ちを折ることなく、ゲームプラン通りのプレーを実行する。そして後半でリバプールを圧倒したのは確かに素晴らしかった。

 カウンターの守備を集中させ、中盤では常に相手より先にボールを拾う。前線は闊達(かったつ)に動き、特にジェコはバスケットボールにおける最近のセンターよろしく、ゴール前のエリアからあえて離れて撹乱を図る。そしてエル・シャーラウィは、トレント・アレクサンダー=アーノルドを空転させる。52分、この両者の動きが噛み合い、ローマは再び同点に追いつく。左サイドを突破したエル・シャーラウィのシュートのこぼれ球を押し込んだのは、ゴール前でフリーになっていたジェコだった。

●観客からは敗者に拍手。あくまでも前向きに

 さらにディ・フランチェスコ監督は、中盤を1枚削って俊敏なテクニシャンのジェンギス・ウンデルを投入し、4トップ気味に勝負をかける。しかし薄くなったはずの中盤は分断するどころか、右サイドから中央に移ったパトリック・シックが個人技でリバプールのMF陣を振り回してチャンスを創出。終盤にエル・シャーラウィが足をつって交代を余儀なくされても、代わって出場した19歳のミルコ・アントヌッチは雰囲気に呑まれず正確なプレーを披露した。最終的にローマは終了間際に2ゴールを集めた。

 試合終了後、スタディオ・オリンピコに集まった8万人超の観客はチームに盛大な拍手を送った。新監督を迎え、選手補強も若手主体に切り替えたローマにとってCL準決勝進出は、本来の目標を超える結果だ。経験不足からくるミスも多いが、1試合ごとに成長し、高い攻撃力も発揮した。「リーグ戦でCL出場権を確保し、できれば来年も準決勝に戻ってきたい。私はこれで満足したくない」とディ・フランチェスコ監督は試合後の記者会見で前を見据えた。

 もっとも、大会を通して急成長を遂げたのはリバプールも然りだ。「今日の試合内容は良くなかったが、今までの戦いを考えれば我われには決勝進出の資格があった。選手たちは限界を突破してここまで来た」とユルゲン・クロップ監督は会見場で胸を張っていた。ゲーゲンプレスと高速3トップの速攻が織りなす爆発力を、次はレアル・マドリー相手に試す。

 ところでこの試合、いち日本人記者として気になったのはセネガル代表マネのパフォーマンスだ。ローマの選手が複数マークについても、彼の足を止められず走力で引き剥がされていた。こんなモンスターを前線に抱えるチーム相手に、日本代表の西野朗新監督はどういうプランを立てるのか。“つなぐサッカー”を志向するにしても、それが生半可なテンポと精度に終わるなら、ボールを持たされミスを待たれた挙句、高速カウンター1本で引きちぎられるという展開になりかねないが…。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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