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武田薬品が高リスクでもシャイアー買収に手を出した理由

5/15(火) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

● 武田薬品はリスクが高いのに なぜ巨額な海外企業買収にこだわったのか

 「約7兆円の海外企業買収はリスクが大きすぎる。なぜ買収にこだわるのか」――。

 約460億ポンド(1ポンド=148円として約6.8兆円)で武田薬品工業(武田)がアイルランド製薬大手シャイアーを買収することについて、首をかしげたくなる人は多いだろう。

 今回の買収については買収資金だけではなく、シャイアーの負債も引き継ぐことになる。昨年末の時点で、シャイアーの長期債務残高は約1.8兆円だ。株式と負債を合わせ総額約8.6兆円の買収規模は、わが国企業による海外企業の買収劇の中で突出している。買収のため武田は約3.3兆円の借り入れを行う予定と言われている。財務悪化への懸念が高まるのも無理はない。

 ただ、グローバル市場で成長を目指す大手製薬企業にとって、企業買収は常に頭に入れておかなければならない成長戦略の一つであることも間違いない。世界市場ではロシュやファイザーなど大手製薬会社が買収によって体力を拡充し、積極的な新薬開発や市場開拓を通じて着実にシェアを拡大している。

 そうした大手製薬会社がマーケットシェアの多くを占有する、いわゆる“市場の寡占化”が進んでいる。そうした変化に対応できないと、武田であっても世界市場の中で競争力を失いかねない。買収などを通じて自ら組織内に変革を起こし、環境に適応していかなければならない一種の“宿命”を持つ。

 製薬産業の特徴として、新薬開発のためには多額の研究開発費がかかると同時に、新薬開発の努力が実るとは限らない大きなリスクも抱える。

 実際、新薬を開発し販売に漕ぎ着けるには、かなりの時間とコストがかかる。そのリスクを考えると、すでに実績がある、あるいは、収益の見通しを立てやすい企業を買収し、成長=新薬開発にかかる時間とコストを節約する意義は大きい。

● グローバル企業を 目指す武田

 世界の製薬業界を俯瞰すると、その経営スタイルは二つに分けると分かりやすい。

 一つは、世界市場を狙うのではなく、ニッチな市場で独自の製品を開発して消費者のニーズをつかむスタイルだ。

 もう一つは、世界市場を狙ってグローバル化を進め、企業の体力を拡大することで、世界の主要製薬会社に伍して競争を展開するスタイルだ。

 もともと、武田は「アリナミン」などの栄養剤や感染予防を軸に、国内でのシェアを高めてきた。しかし、わが国で人口減少・少子高齢化が進む中、縮小が見込まれる国内市場を中心に、従来の事業で成長を追求することは難しい。今後、さらなる成長を目指すためには、より高い付加価値が見込まれる分野に進出したり、期待収益率の高い海外市場を開拓することが求められる。

 それに加えて、わが国では国民皆保険制度の下、政府が医療サービスや薬価の価格を決定している。高齢化に伴い、医療を中心に社会保障関係費は増加している。それを抑えるために、政府は薬価の引き下げを重視している。それも、製薬企業が海外を目指す一因だ。

 そうした企業戦略を実行に移したのが、創業家出身の武田国男氏だった。同氏は、人員削減などの“リストラ”を進めた。それは、武田を国内の大手製薬企業から、“世界の武田”に飛躍させるための経営資源を確保するための取り組みだった。それと同時に、武田氏は糖尿病や高血圧治療の分野に進出し、高付加価値商品の事業育成にも取り組んだ。

 2003年、社長のバトンは長谷川閑史氏に引き継がれた。長谷川氏はリストラを進めつつ、グローバル企業としての成長に向けた戦略を実行した。それが海外企業の買収だった。

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