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さらば物理の世紀、21世紀の主役は分子生物学だ!

5/16(水) 6:15配信

JBpress

 こんにちは、小谷太郎です。今日のテーマは宇宙物理ではなくヒトについてです。

 19世紀は化学が飛躍的に進歩した時代で、化学の世紀と呼ばれました。

 20世紀は物理の世紀でした。相対性理論は宇宙の見方を変え、量子力学の生みだしたエレクトロニクスや原子力などのテクノロジーが人々の生活や戦争の形態を変えました。

 では21世紀は何の時代になるのでしょうか。その17%が経過した現時点で展望すると、これは確実に、分子生物学の圧倒的な発展の世紀となるでしょう。

 2003年にヒトの全遺伝情報(ゲノム配列)が読み取られました。これを皮切りに、ゲノム読み取り技術はさらに進歩を遂げ、現在では、ヒト1個体分のゲノム配列なら、ほんの1日で解読できるところまできています。(もっとも、解読した断片の配列をつなげていく時間は別に必要ですが。)

 この技術は、生物学、医学、犯罪捜査、人類学などなどに計り知れないインパクトを与えつつあります。20世紀の手法に比べ、ゲノム解析からもたらされる情報は革新的です。これらの分野の教科書は、ゲノム解析技術によって書き換えられている最中です。学校で習った常識はどんどん時代遅れになりつつあります。

 先日2018年4月24日、理化学研究所などのグループが、「全ゲノムシークエンス解析で日本人の適応進化を解明」という発表を行ない、話題となりました。これは日本人2234人のゲノム配列データを解析し、この数千年間に進行した進化の痕跡を探した研究結果です。

 【参考】
http://www.riken.jp/pr/press/2018/20180424_2/
https://www.nature.com/articles/s41467-018-03274-0

 この研究結果を紹介するとともに、分子生物学の新しい常識を解説しましょう。

■ ゲノムって何だっけ

 遺伝情報、つまり生物の体の設計図は、「DNA」という長い長い鎖状の分子に記録されています。どれほど長いかというと、例えばヒトの細胞1個の中に収納されているDNAをほぐして全部1列に並べると、約2mにもなります。

 このうち半分の1m分は父親から、もう1m分は母親から受け継いだものです。この1m分の遺伝情報を「ゲノム」と呼びます。生物のゲノムの1セットには、生物の体の設計図が一通りそろっています。

 DNAは「アデニン(A)」「グアニン(G)」「シトシン(C)」「チミン(T)」という4種の「塩基」という部品が連なってできています。(長い長い焼き鳥を思い浮かべてください。)遺伝情報はA、G、C、Tという4文字で書かれた文書といえます。ACGTCC・・・という具合に続く文書です。(焼き鳥なら砂肝、ネギ、モモ、シイタケ、ネギ、ネギ、・・・という感じでしょうか。)

 ゲノムという文書は、「遺伝子」という文の集合です。ヒトのゲノムは2万~2万5000の遺伝子からなります。遺伝子の1文は、「タンパク質分子」の1種類を表すと考えても、まあ大体合ってます。詳細は省きますが、生物の細胞はあるタンパク質分子が必要になると、ゲノム中でそのタンパク質分子の作り方が記述されている1文を参照して、その文にしたがってタンパク質分子を製造します。ヒトの体内では2万種~2万5000種のタンパク質分子が製造され、働いています。

 またゲノム中には、過去のコピーミスのために使えなくなってしまった遺伝子や、同じ文字列が繰り返し書いてある部分や、過去にウイルスが勝手に挿入した部分や、タンパク質分子ではなく「RNA」の設計図や、結局何の役に立つのか分からない意味不明の文字列や、とてもここに全部は紹介できない誠にさまざまな落書きがひしめいています。

 それら全部を引っくるめて、ヒトのゲノムは約30億字ほどです。30億「塩基対」という言い方をします。情報量にして1ギガバイト弱です。

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最終更新:5/16(水) 6:15
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