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奇妙な深海クラゲを撮影、網目の入ったビニール袋みたいな姿

5/17(木) 7:13配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

最新テクノロジーを使った低光量カメラで撮影に成功

 今から半世紀ほど前、フランスの探検家ジャック・クストーは潜水艇「ディープスター4000」に乗って深海を探検した。1965年に建造されたディープスターは、1972年にその役目を終えるまで、深さ数百メートルの深海にすむ生物の発見に大きく貢献した。触手を持たない巨大クラゲもその一つだ。このクラゲは、後にディープスタリアクラゲ(Deepstaria enigmatica)と名付けられた。

【動画】ビニール袋みたいな深海クラゲの鮮明映像

 ディープスタリアクラゲは、メキシコ湾、インド洋、南極海の深さ900メートルの深海に生息する。このクラゲの研究は少なく、生態には謎が多い。外見は大きなビニールのゴミ袋のようだ。薄くて脆い巨大な傘の表面には、交差し合う無数の管が網目模様のように張り巡らされている。

 生息域が900メートルの深海であることから、ディープスタリアクラゲの姿は簡単には見られない。過去には、体の一部が発見されたり、写真におさめられたり、潜水艇の窓から確認されたりして、どんなクラゲであるかまではわかっていた。今回、最新テクノロジーと新たに発表された論文で、謎の深海クラゲの生態がこれまで以上にわかったのだ。

 海洋生物学者デビッド・グルーバー氏の研究チームは、厚いガラスの球体に超高感度低光量カメラを入れクラゲを撮影した。調査の結果は、2018年5月11日付の科学ジャーナル「American Museum Novitates」に掲載されている。

「新しいテクノロジーのおかげで、真っ暗闇の中で深海生物のすぐそばで撮ることができました。生物発光を撮影するには、極めて高感度のカメラが必要です」と、グルーバー氏は語る。同氏は、ナショナル ジオグラフィックのエマージング・エクスプローラーで、ハーバード大学ラドクリフ研究所の研究員でもある。

暗闇の深海世界

 2017年11月、グルーバー氏は、米ロードアイランド大学のエンジニア、ブレナン・フィリップス氏らとともにメキシコ沖のサンベネディクト島から調査船に乗り込み、外洋へ向かった。キヤノンの超高感度カメラME20F-SHを磨きガラスでできた直径33センチの球体に入れた。深海の高い水圧からカメラを守るためだ。

 カメラは遠隔操作型無人潜水機「ハーキュリーズ」に取り付けられ、深さ974メートルの深海へ降ろされた。撮影は、船からの遠隔操作だ。

 地球の70%以上を覆い、生物圏の99%以上がすむと言われる海中で、ただでさえ見つけにくいディープスタリアクラゲを、研究者たちはあえて探して撮影したわけではない。偶然、クラゲがやってきたのだ。

「ハーキュリーズのすぐそばを偶然、漂っていたんです。採取はしませんでした」

 初めてこの個体を見つけたとき、低光量カメラで10分近く後を追った。次に、明るさを調節できるLEDライトを、一番暗い設定にして、クラゲが傘の口を閉じる様子を観察できた。これは、触手のない体に推進力をつけているのか、獲物を捕らえるための行動と考えられている。撮影中、クラゲがカメラを守るガラスに近づいた。そのおかげで、体全体に走る網目状の消化管の組織構造を間近に観察できた。

「ふだん、このクラゲを照らすのは、周囲の発光生物の光くらいです」と、グルーバー氏。

 生きた個体のほかに、死骸にも遭遇した。深さ900メートルの深海底でディープスタリアクラゲの死骸を撮影したのは、恐らく今回が初めてだ。ほかの深海生物がクラゲの死骸に集まる様子を見て、グルーバー氏は「巨大なフードパック」と呼んだ。食べものが見つかりにくい深海では、生物の死骸も貴重な栄養源だ。ディープスタリアクラゲの死骸には、タラバガニの仲間やコエビの仲間が群がっていた。

深海観察の新たな手法に

 グルーバー氏たちは調査では、深海生物を自然な状態で観察できるよう、生物に干渉しないように心がけた。今回うまくいったのは、低光量の環境下で撮影できるカメラがあったからだ。このカメラなら、わずかな光量で鮮明に撮影できる。

「これまでのカメラは必要な光量が足らないために、深海の様子を撮影しても見過ごしてしまうものがたくさんあったと思います」

「小さなペンライトを携えて潜水しているみたいですね」と、グルーバー氏は語る。今回の調査は、ディープスタリアクラゲの貴重な研究資料となった。また今回調査で使った方法は、これまで研究が難しかった、ほかの深海生物の調査への応用が期待されている。

文=Elaina Zachos/訳=ルーバー荒井ハンナ

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