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32歳、飲み屋で歌って生計を立てる男の大望

5/17(木) 9:00配信

東洋経済オンライン

これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむと古田雄介が神髄を紡ぐ連載の第34回。

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■“流し”を始めて3年目

 新宿駅西口直結のビル地下3階にできたばかりの新宿名店横丁。昭和風のレトロな飲み屋街をイメージしたフロアに肉専門店が5軒並ぶ。この店々をアコースティックギターと共に行き来しているのが、四元壯(よつもと・しょう)さん(32)だ。“流し”を始めて3年目。流しだけで生計を立てるようになって1年半が経つ。ここと東京・立川の旭日食肉横丁を拠点に、連日生歌を披露している。

 客に渡す曲目リストには洋邦男女合わせて100曲以上が並ぶ。演奏料は決めていないが、目安として1曲500円と説明することが多い。歌い方にクセがなく、フォークもロックもよく通る声で歌いこなす。声量は場の状況に合わせて、「リスエストしてくれたお客さん中心にちょうど無理なく届くように」と意識しているという。

 流す時間帯はだいたい19時ごろから24時ごろまで。1日で成果が3000円しかいかないこともあれば、2万円を超えることもある。大まかな目標値は1万円だが、変動が激しい稼業なので、日々の結果にいちいち一喜一憂しない。

 そんな四元さん、2年前は世界的な掃除機メーカーの国内代理店に勤める正社員だった。その頃に結婚した奥さんといまも2人で暮らしている。リストラに遭ったわけじゃない。自ら進路を選んで現在がある。傍から見るとずいぶん大胆なジョブチェンジのように思えるが、四元さんのこれまでの生い立ちに触れると、むしろ、なるべくしてなったように感じられる。

 四元さんが生まれたのは1986年3月の鹿児島県。まもなくして埼玉県朝霞市に移り、実業家の父と専業主婦の母、2つ上の姉がいる家庭で育つ。4人家族だが、父は仕事の付き合いもあって家を空けることが多く、たまに帰ってきても酩酊してばかりいた。それが原因で両親がけんかしている姿が目に焼き付いている。一方で、酔った父がギターをつま弾いて歌ってくれた楽しい記憶も残っている。たまに行く家族旅行では皆で旅館のカラオケに興じるのが恒例だった。

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