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ノーベル賞ユヌス氏が一橋教授 野中氏と対談、「笑い」が「自分らしさ」を解き放つ

5/18(金) 6:10配信

ビジネス+IT

 日本のお笑いの老舗、吉本興業がノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏監修のもと「ユヌス・よしもとソーシャルアクション(yySA)」を立ち上げた。これに関連し、ユヌス氏と一橋大学 名誉教授 野中郁次郎氏が対談。なぜ社会的課題解決のアプローチに「笑い」が有効かについて語り合った。

【詳細な図や写真】ユヌス氏、野中氏とも現行のシステムの限界を打ち破る先に「ソーシャルビジネス」を位置づける

●野中氏が挑んだ「おばあさんとのビジネス」

 日本の製造業からイノベーションを起こす組織論を打ち立てた野中郁次郎氏は、アジャイル開発手法としてもっとも広く普及している「スクラム」の生みの親として知られている。

 そんな野中氏は、「新しい意味を生み出していく」ことがソーシャルイノベーションの本質であり、「笑い」を共感を生み出すアートとしてとらえている。

 野中氏がソーシャルイノベーションの事例として紹介したのは、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」だ。

 地域のおばあさんたちを集めて刺盛りなどに添えられるツマモノの生産に取り組んだものの、当初はうまくいかなかった。

 そこで、ツマモノの本質は何かを考えた。実際に料亭に入ってみてわかったことには、ツマモノには意味があり、皿の上に季節を表したり、彩りを添える。つまり、「提供するのは葉っぱではなく、背後にある意味」だ。

 おばあさんたちに体験の機会を持ってもらい、ノウハウを積み上げていった。すると、自分たちで山から必要なものを採ってきて、自分たちの手で売り出し始めた。おばあさん一人ひとりが、パソコンを使い、マーケットの情報と連動し、収穫から出荷をコントロールする、一人ひとりが自律的な企業人になったのだ。こうして、上勝町の葉っぱビジネスは成功した。

 この事例のポイントはツマモノをただの葉っぱとしてではなく、その本質を見極めたところだ。さらに、それを体験を通じて当事者に理解してもらったところも重要だ。こうした結果、自律的にビジネスに向かうことができたのだ。

「『自分の』思いを『われわれの』思いにするには、その間に共感が必要なんです。そうしないとイノベーションは起きない。重要なのは意味を作ること。情報を原材料としてそれに意味を与えるのが知識です。意味作りが非常に重要なんです。その過程で、自分の主観を2人の主観、みんなの主観にする共感がどうしても必要になってきます。これはAIにも置き換えられない、われわれ、人間の独自の能力ではないかと思います」(野中氏)

●「笑い」はイノベーションのキードライバーとなるか

 そして笑いも共感を生み出すアートであると野中氏。吉本興業は7年前から全国の47都道府県に「住みます芸人」を派遣する取り組みを行っている。地域に根ざした問題に光を当て、とかく真面目になりがちな課題をワクワク解決していこうと考えたのだ。


 人間を「人と人との間、インタラクションの中で新しい意味や価値、知識を生み出す存在」とし、共感を媒介にして、コミュニティに新しい意味(価値)をもたせる。これによって、マーケットが価値を利用しながら街を支えていく。アナログとデジタル、科学とアート、暗黙知と形式知などが相互に補完し合いながら新しい意味を生み出していく。それが、ソーシャルイノベーションの本質だと野中氏は語る。

 そのためには、利己ではなく利他、暗黙知を引き出す、共感を得る力が必要となる。そこで「笑い」は大きな力を発揮するのだ。ユヌス氏もアート、笑いには力があると賛同する。

「芸人さんたちの想像力、能力にはすばらしいものがあります。これまでの資本主義は一方向にしか働いていなかった。自分のことだけ、自己の利益に基づいた行動です。でも、私はこれは違うと思います。それでは世界全体がしぼんでいってしまう。人間には共感できる能力があるんです。この力を使わなければなりません。そして、みんなそれぞれが自分らしさを出していく、『自分』を醸成して解き放す力が、笑いにはあると思います」(ユヌス氏)

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最終更新:5/18(金) 10:05
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