ここから本文です

西城秀樹さんの死でまたまた湧き上がる「サウナはカラダに悪い説」の真相は?

5/23(水) 9:00配信

週刊SPA!

 昭和を代表する国民的スター歌手・西城秀樹さん(享年63)が亡くなった。直接の死因は急性心不全だが、西城さんは48歳と56歳のときに脳梗塞を発症している。豪快な性格で知られ、病で倒れる前は1日にタバコを3~4箱、一晩でワインを2本空けていたと本人が発言。さらに、ここに来て注目されているのが趣味のサウナ通いだ。最初の脳梗塞も、水を飲まないままサウナに入ったことが原因とされる。西城さんは、サウナで汗を出し切った後のビールやラーメンを何より楽しみにしていた。

 これで勢いづいたのが、サウナ反対論者たちである。サウナを巡っては「身体にいいのか? 悪いのか?」という議論がかねてより活発に行われていたのだが、西城さんの件を機に「ほれ、見たことか! やっぱりサウナは身体に毒じゃないか!」といった論調が目立つようになった。

 ネットを見ると、≪西城秀樹関連のニュースでサウナが話題やけども、TOKIOの松岡君もサウナで脱水起こして救急搬送されてるよね≫≪西城秀樹もサウナ、長嶋もサウナ、若島津もサウナ……サウナってやっぱ危険なんだな~≫≪ミスターと共にサウナによって壊された昭和のスター≫≪サウナってじっと汗流してるだけで痩せる訳じゃないし、血がドロドロになるし、尿酸値上昇や脳梗塞のリスクもすごいあるんだよね≫などの意見がズラリ。中には≪やはりサウナはバビロン。悪魔の棲む部屋だった≫などとオカルトめいた書き込みまで散見できた。だが、イシハラクリニックの石原結實院長はこうした意見に異を唱える。

「サウナが原因で心不全になるというのは、おかしな話。というのも、鹿児島大学の鄭忠和教授は心不全の患者をサウナで治しているからです。和音療法と呼ばれるこの治療は’00年から始まっており、めまぐるしい成果を上げている。そのやり方は65度くらいの低温サウナに約15分入り、それを週3ペースで繰り返すというもの。健康のため、サウナは積極的に利用するべきです。ちなみにサウナの本場・フィンランドでは、“サウナに入る回数が多い人ほど、脳卒中、心臓病、がん、うつ病になる確率が下がる”という研究結果も出ています」

 そもそも西城さんや長嶋茂雄が倒れたのは脳梗塞。元若島津の二所ノ関親方が倒れたのは脳出血。脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破れる脳出血は、まるっきり逆の病気である。それをごっちゃにして「サウナは脳に悪い」と決めつけるのは、あまりにも短絡的な意見と言える。

「ただ、“何事もほどほどに”とは言えますね。やせ我慢して15分も20分も入るのは、身体に負担がかかりすぎる。“今日は何分入る!”とか事前に決めることはなくて、気持ちいいなと感じる程度で出るのが正しいサウナの入り方なんですよ。サウナで汗を流すと気分もスカッとするじゃないですか。そして水分をたっぷり摂ればいい。あとはサウナに入る前、少しぬるめのお湯に浸かると身体に優しいかもしれません」(石原院長)

 たしかに根性論丸出しのサウナー(サウナ愛好家)は、中高年男性を中心によく見かける。こうした“昭和のサウナ道”は、非科学的という意味で「運動中、水分を摂らない」「膝が壊れるまで、うさぎ跳びを繰り返す」などの前時代的トレーニングに通じるものがある。昭和どころか平成も終わろうとしている今、スマートなサウナ入浴を心がけたいものだ。

「私自身、無類のサウナ好き。週2度ほど足を運びますが、サウナ室内で倒れている人なんて見たことないですけどね。イギリスには“人が犬に噛まれてもニュースにならない。人が犬を噛んだらニュースになる”というジョークがある。それと同じですよ。毎年、日本人は100万人以上が亡くなっていますが、その中でサウナが死因という人がどれだけいます? がんや交通事故のリスクに比べたら、いかに微々たるものか……。有名人が倒れたからといって、印象論に左右されすぎですよ」(石原院長)

◆ダイエット&酔い覚まし目的のサウナは危険

 さて、西城さんがサウナに通った理由のひとつに、ダイエットが挙げられる。常に人に見られる職業だけに、身長181cm・体重68kgという均整の取れた体型を維持する努力を重ねていたのは想像に難くない。最近は若い女性の間でもサウナがブームになりつつあるが、これも美容やダイエット目的という要素が大きいはず。しかし、ここには根本的な疑問が残る。果たしてサウナは本当に痩せるのか……?

 これまで多くのアスリートの減量を見てきたトレーナーの足立光氏(ボディプラント六本木)は、西城さんのように水を飲まずにサウナに入る格闘家が多くいることを認めつつも、「あまりにも特殊なケース。一般人が真似するのは自殺行為」と断罪する。足立氏によると、ファイターたちの減量は以下のようになっているという。

「階級にもよりますが、試合前は2~3ヶ月かけて10~15kg落とすケースが多い。そして最終段階で“水抜き”と呼ばれる減量に入ります。これは水分を摂らずにサウナに入るなどして、一気に体重を落とす行為。汗もかかない、カラカラに干からびた状態にするのです。これはかなりの荒業で、身体から必要以上に水分が抜けると、脳が縮んで重大事故が発生する可能性も増える。ただ、ここはポイントなのですが、プロの場合は前日計量がほとんど。計量時に規定体重をパスすると、翌日の試合に向けて選手は必死で体重を“戻す”んです。つまり水抜きとは、むしろリバウンドすることを目的にしている減量。通常のダイエットと根本的に違うということがおわかりいただけるはずです」

 試合前日の軽量時から翌日の試合時間まで、10kg以上リカバリーする選手もザラにいるというから恐ろしい。ボクシングではIBFが各階級のリミット+10ポンド(4.45kg)を前日計量から当日のリバウンド上限として規定。だが、それ以外の団体では特に制限がないのが現状だ。MMA(総合格闘技)にいたっては、ボクシング以上に熾烈な「体重戻し合戦」が展開されている。今年3月に行われた山中慎介VSルイス・ネリの試合でネリが体重超過が発覚した際、「2kg違えばパンチの破壊力は段違い」などと語られた。だが、試合当日の実質体重で見れば、もはやそれどころの話ではないのだ。

「個人的には、サウナがダイエットに向いているとは到底思えません。入り方には注意が必要です。さらに言えば、美容・健康業界でしばしば使われるデトックスという概念もエビデンスのない疑似科学ですからね。汗の中に毒素が含まれるなんて、専門家からすれば笑止千万ですよ。ではサウナが身体に悪いかと言えば、決してそんなことはない。血行をよくしたり、新陳代謝を促したりと、プラスになる面は確実にあります。要するに汗を流して体重を減らすのではなく、毛細血管まで温めて血液の流れを活性化させる目的で入るものなんですね。その部分を理解していれば、サウナはあなたの健康をサポートしてくれるはずですよ」(足立トレーナー)

 サウナが健康に悪いということはない──。石原院長も足立トレーナーも「サウナ害悪論」を一笑に付すが、「入り方」に関しては注意を促している。「長時間入りすぎる」「水分を摂らない」といった行為は絶対にNG。さらに「よくあるサウナの誤った入り方」にも言及する。

「お酒を飲んだあとでサウナに入る人をよく見かけますが、これは本当に危険。“サウナに入って酒を抜く”なんて、ありえないことなんです。そもそもアルコールというのは揮発性があって、身体の水分を奪うものですから。特に40歳を過ぎてからは、血栓ができやすいので要注意。“飲んだら入るな!”は徹底していただきたいです」(足立トレーナー)

 サウナとの「正しいつき合い方」を改めて考えていきたいものだ。〈取材・文/小野田 衛〉

日刊SPA!

最終更新:5/23(水) 9:00
週刊SPA!

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊SPA!

扶桑社

2018年6月26日号
06月26日発売

¥420