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燃料いらずの夢の宇宙エンジン、第三者がはじめて検証、結果は?

5/25(金) 7:16配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

物理法則に反すると言われるNASAの「EMドライブ」

 宇宙旅行は大変だ。重い宇宙船に貨物、そして人間を打ち上げ、それなりの速度で別の惑星まで飛行し、欲を言えばねらった目的地でちゃんと停止したい。それには莫大な量の推進剤が必要になる。残念ながら、現在のロケットではおよそ非現実的だ。

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 だが、燃料を使わずに推力を得られるエンジンがあれば、話は別である。

 まるで夢のような話に聞こえるけれど、NASAの研究所イーグルワークスは、まさにそのようなエンジンを製作しようと試験を重ねてきた。物理法則に反するとも言われるその装置は、「EMドライブ」と呼ばれ、燃料を使わず、密閉された円錐形の容器の中でマイクロ波を反射させるだけで推力を得るとされる。

 いわば、スター・ウォーズの宇宙船ミレニアム・ファルコンが、ハン・ソロ船長がダッシュボードに頭突きをしただけで飛ぶというようなものだ。奇妙な話に聞こえるのは当然である。

 EMドライブについては、2016年末にも、NASAが最新試験結果を発表して話題になった。そして今度は、NASAとは無関係のドイツの研究者たちが独自にEMドライブを製作し、NASAが成功したと主張する実験の結果を検証し、報告した。

 その内容は、最近開催された宇宙推進会議の記録によると、「推進力は、EMドライブから発生したのではなく、何らかの電磁相互作用による」というものだ。

 ドイツにあるドレスデン工科大学のマーティン・タジマール氏率いるグループは、様々なセンサーや自動の機器を取り付けた真空槽の中に、EMドライブを入れて試験を行った。そうやって、振動や熱、共鳴、その他推力を発生させそうな要因をほぼ全てコントロールできたものの、地球の磁場の影響は完全には遮断できなかった。

 EMドライブ内でマイクロ波の反射が起こらないような状態にして、試験装置のスイッチを入れたが、EMドライブはそれでも推力を得ていた。これはおかしい。NASAの説明が正しければ、推力は発生しないはずだ。

 研究者が出した暫定的な結論は、真空槽の中の電気ケーブルに地球の磁場が影響を与えたため、推進力が測定されたというものだった。ほかの専門家も、この結論に同意している。

「EMドライブの場合、実験でわずかに確認された推力は、地球の磁場との相互作用によるというのが有力な説です」と、自らも独自の推進装置を開発している米カリフォルニア州立大学フラトン校のジム・ウッドワード氏はコメントした。

 地球の磁場の影響を受けずに試験を行うには、ミューメタルという合金で作られた磁気シールドの中にEMドライブを密閉する必要がある。だが、イーグルワークスが行った試験でも、このような磁気シールドは使われていなかった。つまり、イーグルワークスの試験結果が磁場の影響を受けていた可能性を否定できない。

 ドレスデン工科大学の報告は、EMドライブの概念自体に冷や水を浴びせるような内容だが、最終的な結論とするにはまだ早いとウッドワード氏は考えている。ミューメタルの磁気シールドは別としても、ドレスデンの試験はかなり低い出力で行われていた。そのため、「本当に推進力が発生していたとしても、ごくわずかで、ほかの雑音にかき消されてしまう可能性もゼロではありません」と、ウッドワード氏は言う。

 したがって、もっと出力を上げた試験を行えば、論争に決着をつけてくれるかもしれない。

文=Nadia Drake/訳=ルーバー荒井ハンナ

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