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買う勇気はあるか? 大人のV12フェラーリ、GT4ルッソの魅力

5/26(土) 21:13配信

GQ JAPAN

京都在住のモータージャーナリスト・西川 淳が、注目のクルマを東京-京都間のロング・ツーリングの試練にかける「GTドライブテスト」連載。第6回はV12気筒NAエンジンをフロントに搭載するフェラーリの4座クーペ、フェラーリ GTC4ルッソが登場。

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初めてのフェラーリ

“ルッソ”というと、ヴィンテージ・フェラーリの250GTルッソを思い出す。

今から25年以上も前のこと。フェラーリが大好きで、中古を買おうとしていた。日本にはあまりいいのがなかったのと、円高ドル安だったので、アメリカで買うつもりで情報を集めていた。

予算は1000万円(当然、借金だけど)で、当時ならディーノやBBがラクショーで買えた。ちょっと頑張ればデイトナも狙えたし、もう少し気合いを入れたならば、なんと275GTBにも手が届いた。

結局365BBを買ったのだけれども、決める直前に店から250GTルッソが入ったがどうだ? という連絡がきた。デイトナよりずっと安かった。美しいデザインだな、とは思ったものの、小さい頃から憧れたフェラーリのカタチではなかったし、初めてのフェラーリにいきなり60年代を狙うほどのエンスーでもなかった。

よくある、“あの時買っとけば良かった”話だ。そのとき、買わなかったということは、それほど好きじゃなかったというだけの話で、たまさかハナが効いて手を出していたとしたところで、1000万円が2000万円になった時点で売り払っていたはず。とうてい、評価が2億円を軽く超えてきた今の今まで持っていたとは思えない。

“あの時~”話では、みんな大事なこと=そのとき全財産を投げ売ってでも欲しいと思えるほど好きだったかどうか、という前提を忘れがち。ボクにとっての250GTルッソがそうであったように、歳を重ねるなかで好きになってしまうこともあるから、“あの時~”が悔しく思えてしようがないだけのこと、なのだった。

■V12派 vs. V8派

というわけなので、ルッソの名前が復活すると知ったとき、ちょっと気が重くなった。そのクルマがまこと素晴らしければ、ルッソという名ゆえにボクのなかで悔しさが、さらに募る。

かといって、だったら新しいルッソを買ってしまえ~などといった豪気な経済力もない。いっそ、どうしようもないクルマであれば良いのに、なんて、自動車ライターとしてはけしからぬ暗い思いに駆られたりもした。

はたして、北イタリアで初めて乗ったGTC4ルッソは、“期待”に反していいクルマだった。極上のグランツーリズモであり、12気筒エンジンの精緻でスムースなフィールが腹に染みわたった。

その後、V8ターボを積み、ちょっとキャラクターの違った弟分のGTC4ルッソTが登場するにいたって、マニアのなかでは「やっぱり12気筒じゃなきゃ」派と、「いやいや8気筒で十分だ」派とに分かれての論争にまで発展する。果たして、ルッソを買うとしたら、どちらを選ぶべきなのか?

ボクは“やっぱり12気筒でなきゃ”派だ。8気筒版のルッソには、なるほどFRらしいハンドリングの妙があって、家族で楽しむスポーツカーとして、それは飛び切りの選択である。

そんなスポーツカーらしさを取るか、はたまた12気筒のグランツーリズモらしさを欲しいと思うか。V8+FR(RWD)かV12+4WDか、というパワートレーンの好みの問題も加えて、もし、実際に買うとしたならば、とことん悩んでしまうに違いない。

■12気筒エンジンの魅力
たまたま、とある自動車メディアの企画で、8気筒のルッソTを箱根で存分に試す機会があった。そのスポーツカーらしさを十分堪能したのちに、今度は12気筒のルッソで京都を目指すことにした。好みのほうを、じっくり確かめてみようという魂胆だ。

12気筒エンジンの魅力は、確かに回してナンボという側面がある。だから、未だに12気筒の自然吸気が好まれるし、3ペダル・マニュアルミッションとの組み合わせとなれば、今となってはマニア垂涎のパワートレーンだ。

けれども、実は、さほど回転をあげない領域、1000回転そこそこから2000回転まで、におけるエンジンフィールも、何とも言えずまろやかで心地良かったりする。猫が喉を鳴らしている程度のエンジンの動きが常に身体に伝わってくるのだけれど、そこから感じる機械的な動きの精密さが、たまらず気持ちいいのだ。

いつものように東名高速道路を、そうやって静かにクルージングしていると、フェラーリを駆っているにも関わらず、さほど飛ばしたい気分にはならないものだし、追い越し車線をかっ飛ばしていくスポーツカーの後ろ姿を見ても何とも思わない。

その気になれば、あっという間に抜き返せるという自信が、泰然とした余裕のドライブへ優しく導いてくれるのだ。肉体的にはもちろんのこと、精神的にもラクなロングドライブができる所以であろう。

(公開は2018年5月26日を予定)

文・西川 淳

最終更新:5/26(土) 21:13
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