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ケガする確率が高いアメリカンフットボール。「脳症」についえ考察

5/27(日) 7:40配信

エスクァイア

これは果たして、アメフトの終わりを意味しているので しょうか?

 この不安はマルコム・グラドウェルのようなライターたちによって、「脳震盪の問題は“実存する脅威”である」と取り沙汰されてきました。それにもかかわらず、このスポーツはこれまでになく人気を博しているのです。 
 
 2015年、NFLは史上最大のスーパーボウルを開催し、アメリカのテレビ史上最高 の視聴率(1億2千8万人)を記録しました。2014年のシーズン初月、人気TV番組の上位7位はすべてNFL関係でした(これも史上初のできごととなっています)。アメフトはアメリカ国内の人気スポーツ上位に、いつも入賞しています。第1位がNFL、その次にメジャーリーグであり、続いて再びカレッジフットボール(バスケットボールが4位に入る)と続くのです。 
 
 ファンタジーフットボール(Yahoo!などで予想するシミュレーションゲーム)には、約330万人のプレーヤー が登録されており、ビリー・アイドルの “レベル・イェル(反逆者の叫び)”さながら、NFLはさらに多くを望んでいるのです。 
 
 2010年、コミッショナーのロジャー・グッデルは、「2027年までに100億ドルのビジネスを、250億へと成長させたい」と発言しました(ちなみに、プレミアリーグの2013‐14の収益は50億ドルでした)。メキシコ、ブラジルおよび中国が成長中の市場で、2015年10月4日にマイアミ・ドルフィンズとニューヨーク・ジェッツがウェンブリーで試合をした際には、NFLの人気ぶりは「イギリスというサッカー大国をも凌駕してたか」と思えるほど、大盛り上がりだったのです。

これはアメフトの魅力に対する逆説なのです。

 CTEの証拠とともに、いくつかの悲惨な事件が起きています。それでもこのスポーツは、成長し続けていくのです。 
 
 それはまるで、「脳症」自体がひとつの人気の要素であるかのようにも感じ取れます。つまりアメフトとは、「瀕死」と「繁栄」を同時に経験しているのです。これは土台が揺らいでいるにもかかわらず、次々と増築していく塔を彷彿とさせています。認知的不協和(矛盾する2つの認知をした場合に生じる不協和)の話とも言えるのです。 
 
  
 たとえば、『Journal of Neurology』誌1月号で発表された研究では、12歳未満でプレーを始めたNFLの選手のほうが、それ以降に始めた選手よりも障害の度合いが大きいことを報じています。著者の1人である、ボストン大学脳外科のロバート・カントゥ教授は、子供たちは特に頭の外傷に対して脆弱であると強調しています。 
 
「若い脳は、不釣り合いに大きな頭の中に収められています。頸(くび)だってとても脆弱です。そのため、張り子人形のような影響を受けてしまうのです。幼い子供を、繰り返し頭の怪我にさらすことは私にとってただただ『無茶なこと』だとしか言いようがありません」と、カントゥ教授はコメントしています。 
 
 このレポート事態がタックルのようなものです。 
 
 最初のアタック、その次はテイクダウン…なぜなら、若手プレーヤーの育成が滞れば、NFLは2重の被害を被るからです。未来の選手だけでなく、未来のファンも失。つまり彼らは、プレーしたことのないスポーツには興味をもたないものだからです。しかし、この論文発表の4日後には、NFLは史上最大規模のスーパーボウルを開催したのです。果たして、今後、この問題はどうなっていくのでしょう?

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最終更新:5/27(日) 7:40
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