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菊池涼介、進化は守備だけじゃない。「トリプルスリーやるなら、キク」

5/27(日) 8:01配信

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 「ふぅ~」

 試合を終えて一段落すると、広島・菊池涼介は勝利の安堵のように深い息をつく。

 菊池は勝敗によって喜怒哀楽を表に出さない。チームの結果だけでなく、個人としての結果にも、一喜一憂しない。チームをけん引する立場であることを自覚しているからこそ、自身の感情は胸にしまったまま。

 「怒りを言葉にしたり爆発させて、打てたり勝てたりするのであれば僕もやりますよ。でもそうやって打てるわけじゃないし、チームが勝てるわけでもない」。頭にあるのは「チームがどのようにすれば勝つのか」

 静かな表情、態度が強い責任感の表れだ。

丸や新井が離脱もチームトップの成績。

 チームはここまでセ・リーグのペナントレースで首位を走っている。ただ、安定した戦いを続けられているわけではない。主力選手の離脱が大きな要因にある。

 開幕直前に新井貴浩が離脱。4月28日にはダイビングキャッチした際に右太もも裏を痛めた丸佳浩がチームを離れた。精神的支柱とともに打線を引っ張ってきた主軸の不在は、そのまま菊池の両肩に乗ったように感じる。

 新井が一軍に復帰した5月11日の阪神戦は14-1で大勝した。重荷を少しベテランに渡すことができたのか、菊池も2本塁打4打点。翌日には「(新井がベンチにいると)やっぱり違う。新井さんにはあと10年はやってもらわないとね」と頬を緩めた。

 昨季はシーズン前にWBCを戦い「自分の体じゃない」という感覚の中で戦った。今季はペースを崩さずに調整してきたものの、シーズン序盤は外的要因による影響を受けてきた。

 それでも、プレー面では攻守に渡り大きな原動力となり続けている。ここまで全試合で「2番・二塁」でスタメン出場。つなぎ役をまっとうしながら、打率、安打、打点でチームトップの成績を残す。

攻撃的な守備でも失策はしない。

 守備範囲の広さも衰え知らずで健在だ。広島投手陣の制球難から四球を連発する場面が続いたシーズン序盤も、根気強く、1球1球ポジションや構えの体勢、重心などを変えてきた。二塁ベース付近から一二塁間深くまで、ヒットゾーンもことごとくアウトにすり替えている。

 本能的な感性もあるが、配球や相手打者のスイング軌道、過去の傾向から打球の方向を導き出す。

 「もちろん全部当たるわけじゃないけど、ズバズバ当たるときもある。もちろん外れるときもある。それでもやらないと」

 多くのファンを魅了するビッグプレーの陰には、緻密なデータがある。攻撃的な守備で、今季目標とする「失策ゼロ」を継続する。

 驚異的な守備範囲だけでなく、バランス能力に優れ、強肩や冷静な判断力を兼ね備えている。

 ここまで広島はリーグトップの併殺を記録する。それだけの併殺を積み重ねたのは、二遊間のコンビネーションとともに、二塁手菊池の肩力がある。二塁手の捕殺からの送球時の動きは、遊撃手よりも限られる。その中で菊池は見た目には分からないほどの細かな重心移動で力強い送球を可能にしている。

 数年前の首脳陣は二塁から遊撃へのコンバートも視野に入れていたものの、肩の強さによる内野安打減と併殺増によって、コンバート案は封印されたのもうなずける。

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最終更新:5/27(日) 8:01
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