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白米のかわりに食べたい 「もち麦」はなぜ健康にいいのか

5/28(月) 18:11配信

サライ.jp

美味しく食べられて健康にもいいと注目の食材「もち麦」は、米や小麦と同じイネ科に属する大麦の一種である。その歴史は古く、1万年ほど前には西アジアから中央アジア(現在のイラク付近)で栽培されていたと考えられている。

日本へは小麦よりも早く、1800年ほど前に中国から伝わり、奈良時代には日本各地で栽培されていたといわれている。大麦は米に次ぐ、重要な農産物だったといえよう。その後、日本人は長いあいだ、主食として米に大麦を混ぜた麦飯を食べてきた。昭和40年頃まで、日本の食卓には麦飯が上っていたのである。

これほどまでに長い歴史を持ちながらも、もち麦が一般的に認識されたのは、ごく最近のことである。大麦の加工販売メーカー「はくばく」の広報担当・山下奈々さんは次のように話す。

「大麦には、押麦のような“うるち性”のほか、粘りのあるアミロペクチンというでんぷんの多い“もち性”があります。米の“うるち”と“もち”のような性質の違いが、大麦にもあるのです」

同社がもち麦の商品を一般発売すると、そのもちもちした粘りと弾力のある食感に注目が集まった。麦飯として炊いてみるとパサパサ感がなく、食べやすくて味がよい。

やがて研究が進められるにつれて、もち麦は他の大麦と比べて、健康によい「水溶性食物繊維」が多く含まれていることがわかってきた。食物繊維は水に溶けるかどうかによって、水溶性と不溶性に分けられるが、水溶性食物繊維を多く含む食品は限られており、もち麦はとても貴重な食材である。

うるち性の大麦100gに含まれる水溶性食物繊維は6gであるのに対し、もち麦は9g。すなわち、もち麦を食べれば、うるち性大麦の1.5倍の水溶性食物繊維を摂れるという計算になる。

「近頃では“腸内フローラ”と呼ばれる腸内細菌叢(微生物群集)の存在が注目されるようになり、腸内環境を整えることが健康によい影響をもたらすという考え方が浸透してきました。もち麦の水溶性食物繊維には、腸内の善玉菌を増やす働きがあり、便通の改善にも有効です」

一方で、幅広い年代から関心を集めているのは、もち麦の“ダイエット効果”だという。

「もち麦に含まれる水溶性食物繊維の一種であるβ(ベータ)-グルカンが、小腸で糖や脂質を吸着して排出するため、痩せやすくなるといわれています。また、β-グルカンが糖の吸収を抑えると、血糖値の上昇もゆるやかになります。これにより、インスリン(血糖を下げ、脂肪を蓄えるホルモン)の分泌も抑えられ、その結果、太りにくい状態を保つことができるのです」(松生さん)

さらに特筆すべきは、「セカンドミール効果」と呼ばれるもの。β-グルカンの血糖値を上がりにくくする働きは、次の食事まで長時間持続するのが特徴だという。例えば、朝食にもち麦を摂取すれば、昼食後の血糖反応まで低減させることが可能だと考えられる。

血糖値の上昇を抑えることは、糖尿病の予防にもつながる。β-グルカンは海外でも注目されており、高血糖に有効であるという報告も少なくないという。

もち麦の水溶性食物繊維には、サライ世代にとって、まだまだ見逃せない健康効果がある。

β-グルカンが血中コレステロールを減らす効果については、2006年、アメリカの食品医薬品局(FDA)が認めており、日本の特定保健用食品(トクホ)のような「健康強調表示」を製品に付けることも許されている。β-グルカンは、脂質の消化吸収を促進する胆汁酸を取り込んで排出する働きを持つ。そのため、余分なコレステロールを吸収せずにすむという効果が期待できる。

また、高血圧の予防・改善には、β-グルカンの塩分の吸収を抑える働きが効く。それに加えてもち麦は、塩分を排出するカリウムも豊富である。

松生さんは、こうした様々な健康効果は、メタボリックシンドロームの予防・解消にも功を奏すのではないかと見ている。

「メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうち、ふたつを併せ持った状態です。こういった症状は相互に関わり合って起こるので、もち麦をぜひおすすめしたいですね」

白米の代わりにもち麦ご飯を
では、一日にどのくらいのもち麦をどのように摂取すれば、健康効果が見込めるのだろうか。

松生さんは、白米2対もち麦1の割合で炊いた「3割炊き」のもち麦ご飯1杯を、まずは1日1食、白米の代わりに食べることを推奨する。松生さん自身も毎日、もち麦ご飯を食べており、「大切なのは、習慣として毎日続けること」と念を押す。

3割炊きのもち麦ご飯1杯で、一日に必要な食物繊維3.7gの約62%相当が摂取可能。5割炊きなら約116%相当となる。
前出の「はくばく」広報担当・山下さんは、昔の麦飯の味とは異なることを強調する。

「精麦技術や育種が進歩したおかげで、昔のような匂いもなく、とても美味しくなっています。特にもち麦は、もちもちとした食感が好評で、習慣として続けやすいという方が多いですね」

慣れてきたら1日2食にしたり、もち麦の割合を増やしたりしてもいい。そうすれば、不足しているといわれる食物繊維の量をもち麦だけで補うことができる。また、もちもちとした食感を生かして、様々な料理に加えてもよい。

かの徳川家康も、健康のために麦飯を好んで食べたと伝えられており、平均寿命が短かったという江戸時代に74歳という長寿を全うした。腸の調子がよくなると、自律神経も整うという。もち麦を日々の食卓に取り入れて、いきいきとした人生を過ごしたい。


松生恒夫さん。昭和30年、東京生まれ。東京慈恵会医科大学卒業、医学博士。東京・立川市の松生クリニック院長。『「もち麦」で腸イキイキ革命!』(日本文芸社)など、著書多数。

※この記事はサライ2017年5月号より転載しました。データや写真、肩書き等は当時のものです(取材・文/大沼聡子)

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最終更新:5/28(月) 18:11
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