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農業の継承は、先代が元気なうちに奪い取れ

5/28(月) 6:00配信

JBpress

 現代の日本には、社会が抱える課題の克服に使命感を持ち、その実現のためにイノベーティブな取組みを行う人々がいる。ソーシャルアントレプレナーと称すべき人々である。

 10年余にわたって「1次産業を、かっこよくて感動があって稼げる3K産業にする」活動に邁進してきたみやじ豚・代表取締役の宮治勇輔氏(39)は、さしずめその代表格の1人であろう。様々なメディアに取り上げられ広く知られる宮治氏であるが、後編では、日本の1次産業において重要なテーマとなっている事業承継・地方創生に対する宮治氏の視点を紹介したい。

 ◎(前編)「日本の1次産業を守るバーベキュー」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52962
◎(中編)「農業は変えられる!  起業家志望から家業の道に」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53060

■ 事業承継は「相続」ではない

 バーベキューマーケティングを通じて「みやじ豚」の認知度向上に成功した宮治氏は、NPO法人「農家のこせがれネットワーク」を主宰しつつ、日本の1次産業界の若きリーダーの1人として、47都道府県で講演・各種イベントに奔走した。そしてその中で、日本の農業界最大の課題は“事業承継”であることを思い知る。

 そこで、ファミリービジネス・事業承継をテーマに、2015年、「農家のファミリービジネス研究会」を立上げ、このテーマに対する知見を深めていった。そしてそれをベースに、事業承継に対する正しい考え方を広めるべく、JA全農と共に『事業承継ブック』を制作し、全国のJAに1万3000部頒布したという。

 「日本の農業界においては、承継=相続という発想をする人が多く、先代が亡くなったり現役で活動できなくなったりして初めて引き継ぐのが主流でした。そのため、対応が後手に回り、承継がうまくいかないことがとても多かったのです。

 また、先代から“俺の言ったとおりにやれ”と言われていることが多く、後継者は受け身の姿勢になりがちでした。しかし、これでは後継者は成長しません。それにそもそも、父親と同じようにやれと言われるのでは承継に対するモチベーションも上がりません」

 宮治氏は、農業はもとよりあらゆる産業分野にも共通する「事業承継」の本質を次のように語る。

 「先代のやってきた事業の中で、価値を感じる部分を抽出し、それを自分で磨いていくことが事業承継の本質であり、先代が元気なうちに能動的に奪い取っていく点に特徴があります。このように考えれば、家業を継ぐことは魅力的になりませんか?  私自身まさにそうでした。父の事業の価値は“肉の美味しさ”でしたが、父のやり方ではそれを生かすことができていなかった。だから私はみやじ豚をつくったのです」

■ 品質よりも理念や生きざまを見て商品を選ぶ時代

 「家業を継がされるのではなく、自らつかみ取っていくことが大事」と述べる宮治氏。その背景には、生活者の購買行動における選好の変化もあるようだ。

 「日本には銘柄豚が実に400種類あります。しかも、品質的にそれほど大きな違いがあるわけでもありません。端的に言って、もはや品質による差別化は難しいのです。同時に、生活者はスーパーに行ってそこにあるものを買うしかないという状況には飽き飽きしています。せっかく買うのであれば、生産者の理念や生き方に共鳴して、それを応援するために買いたいという人が増えています。ファーマーズバーベキュー(前編参照)のスタートも、こうした変化が背景にあります。これは、肉に限ったことではなく、あらゆる産業分野の商品に言えることではないでしょうか?」

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最終更新:5/28(月) 6:00
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