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家主の不在は1時間まで 民泊、ビックリ規制で激減

6/10(日) 10:12配信

NIKKEI STYLE

 住宅に旅行者などを有料で泊める民泊が6月15日に解禁されるが、事業者の登録届け出が低調だ。1カ月前の時点でも全国で約720件にとどまり、ゼロという地域さえある。数万件以上が営業していた従来とは様変わりだ。解禁を機に民泊をやめるという人たちに理由を聞いたところ、厳しい規制と煩雑な手続きが浮き彫りになった。きちんとルールを守ろうとする「真面目な人」ほど継続をあきらめる矛盾も垣間見える。

■「真面目な人」ほど民泊やめる?

 「観光庁に問い合わせたら、自宅を不在にしていいのは1時間までと言われた。きちんと守れる自信がない」。そう話すのは東京都杉並区で自宅の一室を民泊に提供しているAさん(33)。フリーのシステムエンジニアとして自宅で仕事をすることもあれば、発注元の企業に出向くこともあり、自宅にいられる時間はまちまちだ。
 「これまでは民泊について明確に定めた法律がなかったので、友人を自宅に泊める感覚で気軽に部屋を貸していた」というAさんだが、「法律ができた以上は違反したくない」と考えており、6月15日の解禁と同時に民泊をやめるつもりという。
 壁となったのが、自宅を不在にしていい時間だ。住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行規則には「日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内」とある。観光庁などによるガイドラインは「一概に定めることは適当ではない」としたうえで、原則1時間、生活必需品を購入する店が遠いなど特殊な事情がある場合でも2時間程度までの範囲と記す。
 もっとも、これは家主同居型の民泊の話。Aさんも家主不在型として届け出れば民泊を続けられる。ただし、その場合は手続きが格段に面倒になり、新たなコストも発生する。
 まず苦情対応などの管理業務を外部に委託しなければならない。ほかの部屋と無線で連動する火災報知設備のほか、避難経路を示すための非常用照明器具も必要だ。さらに建物が安全であることを証明するため、建築士に家まで来てもらって詳細な書類を作らなければならない。
 「宿泊費を今より上げなければならないなら、民泊を続ける意味がない」とAさん。もともと4畳半の部屋で1泊25ドル(約2700円)という格安の料金で、外国人旅行者から高い人気を得ていた。「お金もうけが目的じゃない。彼らに喜んでもらって、交流したかっただけなのに……」と残念がる。
 民泊の届け出が低調な2つ目の理由は、営業日数の規制だ。新法のもとで認められているのは年間180日まで。自治体によっては住居専用地域などでさらに制限を加えており、事実上民泊ができなくなっているケースがある。
 新宿駅から西へ電車で十数分。Bさん(60)が民泊を営んでいるのは、商店街の一角にあるビルの2階だ。「1階の直営カフェと合わせて、いろいろな人が出入りする場にして、街のにぎわいを取り戻したかった」。3つある部屋は約90%の稼働率を保ってきたが、民泊解禁とともに営業をやめるという。
 別の場所にある自宅から仕事のため毎日そのビルに通っているBさんは、家主不在型の民泊として届け出るつもりだった。誤算だったのは、ビルが住居専用地域に立っていたことだ。「商店会の会費をずっと払っていたので、商業地域とばかり思っていた」
 ビルのある区は条例で、住居専用地域の民泊を週末だけに制限している。「休暇をとって日本を訪れる外国人に、そんな短い期間で利用してもらえるわけがない」。1階のカフェをフロント替わりにして旅館業法上の簡易宿所にすることも考えたが、これも住居専用地域では認められない。
 昨年7月に民泊を始めるにあたって、Bさんがビルの改修に投じたお金は約2000万円。通常の賃貸住宅に切り替えることで回収はできるというが、にぎわい創出という本来の目的からは外れる。「こんなちぐはぐなことをしていたら、商店街はどんどん廃れてしまう」と危機感を募らせる。

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最終更新:6/10(日) 10:12
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