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入社4年目社員の本音「地味でもじっくりとバイクの楽しさを伝えていきたい」ヤマハ発動機・石田大樹さん

6/11(月) 8:11配信

@DIME

20代と部下とうまくやるには、仕事へのモチベーションを理解することが必要。だが「静岡の磐田市に本社があるうちの会社は、のんびりしている」と、石田さん。資本金857億97百万円、2017年12月期の連結決算が1兆6,701億円。外資系企業とは真逆にある典型的な日本の大企業の一つなのかもしれない。

第22回目はヤマハ発動機株式会社 企画・財務本部 コーポレートコミュニケーション部 広報グループ 石田大樹さん(25才)入社4年目。

「ヤマハって、あー音楽教室の会社ね、石田くん、ピアノとか弾けるんだ」と言われたことが悔しくて、会社の認知度向上に貢献しようと広報の部署を志望。新米の広報マンは失敗の連続だったが、父親と同じ世代の上司は、叱咤することはなかった。だがある時、「広報マンとしてそれを言ってはダメだ」と、上司に諭された言葉は、印象深く彼の心に残っている。

「記事ができたら見せてください」電話取材で何気なく彼が言った時だった。“原稿を事前に見せてくれ”はご法度だと。上司曰く、

「うちが発表したり提供した情報に基づいて、メディアさんには受け取ったように書いてもらうのだから、うちが原稿をチェックするのは筋違いだ。そういうことをメディアさんに要求すると、ヤマハの広報マンの質が問われる」自分の勉強不足と未熟さを実感した出来事だった。

■早速1000CCのバイクを購入、社員仲間とツーリング
僕の中で一番の失敗と言えば一昨年の冬、長野県の斑尾(まだらお)スキー場で開催されたヤマハ製のスノーモービルの体験会でした。ディーラーとコミュニケーションを取るため、広報担当として僕もスタッフとして加わったんです。ところが、体験会の前日から体調がすぐれず、当日は午前中病院に行きまして。「まっ、大丈夫でしょう」という医師の言葉で、斑尾スキー場の会場に向かったんですが、スキー場に着いた時点で、しんどさは限界に達していて。泊まる予定の施設で体温計を借りて測ったら、熱が39度もある。これはヤバイ……。

「すみません」スキー場内の体験会場にいる上司に電話をすると、「気にしなくていいから、すぐに東京に帰って病院に行きなさい」と。結局、経費を使って現地まで来て何も仕事をせずに、長野駅までのタクシー代、7000円ほども会社が出してくれて。病院に行ったのは東京に戻った夜10時頃でした。

「インフルエンザでした」夜遅く上司に報告をすると、「大丈夫か、今夜食べるものはあるか」とか、上司は親身になって心配してくれました。

僕の上司だけでなく、穏やかな人が多いのは本社が創業地に近い静岡の磐田市の田舎にあるからでしょうか。会社説明会の時も他社のメーカーは、ピリッとした雰囲気に包まれていて。ところがヤマハは自分の趣味と仕事がマッチしているとか、先輩社員が好きなことを話していて、和気アイアイとした楽しそうな職場の雰囲気が伝わってきました。

内定をもらって、僕もヤマハのFZ1という1000CCのバイクに乗り換えて。研修期間中にさっそく社員仲間とツーリングに行きました。社内で大型バイクに乗っている人は多いです。

うちの社員はバイク好きか船好きか、ロボットを作りたい人とか。売上げの9割が海外ですから、外国で活躍したい人とかがほとんどです。

良きにつけ悪しきにつけおっとりとした会社だと、改めて感じたのは一昨年10月、ホンダからヤマハへ、50CC原付スクーターのOEM供給の記者会見の時でした。「記者がたくさん来るから、もっとカメラ台を増やそう」「説明用のホワイトバランスも用意したほうがいい」とか、ホンダの社員さんはテキパキと段取り良く動いてくれて。うちと比べて記者会見を数多くこなしているから、場慣れしているというか、会見の準備を主導してくれました。

■この会社ならではのインパクトある決断
「記者の方が記事として取り上げてくれるようなニュースバリューのある切り口を考えろ」とは、よく上司や先輩に言われることです。昨年から新卒採用からエントリーシートでの選考を廃止したのは、穏やかでおっとりした社員が多いうちならではなのでしょうか。プロフィールシートは受け取りますが、それを元に不合格を出すことはしない。

「これインパクトがありますよ。力を入れてプレスリリースさせてください」僕の言葉に、「ふーん……」という感じで、先輩たちはそんなにバリューがあるとは思っていなかった。でも、就活生の多くは実感していると思いますが、エントリーシートは書くのは大変です。時間もかかる。学生時代に頑張ったこととかを必死になって書いても、それで落とされるとガクッと来て。エントリーシートでの選考を廃止するといううちの会社の決定は、かなり斬新で注目されると僕は思ったんです。

「サブタイトルをつけたいんですけど」「やってみなさい」上司の同意を得て、サブタイトルには『エントリーシートによる選考廃止、人物本位の選考へ』と謳いました。FAXで地方紙や全国紙の浜松支局に流すと、いつもはメディアの反応が少ないのに、この時はすぐに問い合わせの連絡が何件も入って。翌日は専門紙をはじめ、地方紙や全国紙にも取り上げられたんです。

「石田のアイデアで全国露出が獲得できました。いいPRになったと思います」上司が部長にそう報告をしてくれて、部長からはお褒めのメールをもらいました。

昨年、広報グループは本社の磐田市から東京のオフィスに移転したのは、ヤマハの全国に向けての露出度を強化することが大きな理由です。

「石田くん、うちの会社のファン作りをするのも、広報の大切な仕事だよ」と、上司には言われています。特にSNSを強化して口コミで社名を浸透させていきたい。ヤマハは特に女性の認知度が少ないんです。アンケートでは20代でうちの会社を知る女性は30%程度。ブロガーとのコミュニケーションは僕の担当ですから、お付き合いのある二輪免許を取得した女性ブロガーの人たちをツーリングに誘ったんです。ブログに書いてもらうための体験をサポートしました。

僕を含めてスタッフが前と後を囲むように、千葉の公園から牛久大仏まで片道約70km、2回目は秩父まで往復200kmぐらい。

「よくよく考えたら、ちょっと無謀だったね」

「事故が起きなかったから良かったけど、ヒヤヒヤもんだった」後で、スタッフとそんな話をしました。それ以外にもコースを借りて、免許を持ってない女性にバイクの楽しさを教えるイベントを開催して。その中で“免許を取りましょう”というキャンペーンしましたが、免許を取得してくれたのは4人。そのうちバイクを買ってくれたのは一人だけ。

今のところ効率は悪いですが、広報マンは宣伝マンとは違います。地味でもじっくりとヤマハの社名とバイク等の製品の楽しさを伝えていきます。

取材・文/根岸康雄

@DIME編集部

最終更新:6/11(月) 8:11
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