ここから本文です

昆虫採集兵器ノムラホイホイ

6/12(火) 11:30配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

「ノムラホイホイ」というふざけた名前のツールをご存じだろうか?

 何のためのツールかというと、昆虫採集のためのトラップ(わな)である。不肖野村が、今を去ること20年以上前に福岡で発案し、さんざん使い倒して虫を採りまくった末に、今でも毎年使っているという代物である。

ノムラホイホイの作り方を見る

「ノムラホイホイ」という名前は、しばしば開発した野村本人が功名心に駆られて命名したと誤解されがちであるがそうではない。当初この道具には、あまりはっきりとした名前がなかった。それで、初期の開発にかかわった、開発者の虫採りの師匠である野田亮氏(現福岡県森林林業技術センター)が命名した。このことはすでに、当時の昆虫雑誌「ルカヌスワールド」(No. 7, pp. 5-9)に発表されている。

 ノムラホイホイがそもそも、どのようにして創意されたのか記しておきたい。1994年当時、開発者野村は九州大学農学部昆虫学教室の助手で、新たな大学キャンパスの移転先に決定した、福岡市西区元岡の環境影響調査の一環としての昆虫相調査に従事していた。今では元岡一帯は九州大学の新キャンパスとして整備が進んでいる。

 昆虫相調査をより効率的に行うために餌(エサ)トラップ調査を行うことが必要になったが、当時の餌トラップ採集法は、採りたい昆虫によってエサや容器がすべてまちまちで、すべてを用意するのは、時間的にも財政的にも非常に非効率だった。そこで野村は、せめて容器だけでも一通りにならないかと考え、飲料水の2リットルのペットボトルを加工して使ってみた。

 当初はフタをつけただけの簡単なもので、透明のままだったが、これではトラップ設置後明るくなると、夜行性の昆虫は明るさを嫌がって出ていってしまう、ということがわかってきた。それでボトルの3つの面をスプレーラッカーで塗装することにした。また雨が降り込むと中に水が溜まって具合が悪いので、水抜き穴を開けることは必須だった。樹上に固定するための針金を通す穴も必要だった。

 後でわかったことだが、このような昆虫トラップは決して筆者が最初の発明ではない。1948年にフランスで初版が出版された昆虫採集法の教科書の中には、空き缶を使った類似の採集法が示されていた。

 他のトラップにはない、ノムラホイホイならではのメリットは、1)1種類の容器で、エサを次々に変えることで、たくさんの種類の昆虫を捕獲することができること、2)夜中に見回る必要がないので、子供にも安全であること、3)同時に数カ所で調査することも可能、などいろいろある。

1/3ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ナショナル ジオグラフィック日本版の前後の記事