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スイスのソブリンマネー国民投票と銀行の信用創造

6/14(木) 8:26配信

NRI研究員の時事解説

スイスで通貨発行に関する国民投票

ビットコインなど仮想通貨が生み出された背景には、国民が通貨発行の権限を政府・中央銀行から取り戻す、という発想があった。これとは全く逆に、通貨の発行を中央銀行に限定するという、「ソブリンマネー・イニシアチブ」の是非を問う国民投票が6月10日にスイスで実施された。

事前の予想通り、反対75.7%、賛成24.3%で否決された。ただし、10年前のグローバル金融危機(リーマンショック)以降の金融システムの安定確保という問題、通貨はどのようにして生み出されるのかといった根源的な課題を、改めて考えさせるきっかけになった。

通貨が作られるメカニズム

通貨(マネー)を構成するものの大半は、紙幣・硬貨といった現金ではなく銀行預金だ。また、量的緩和策が現在採用されている国では、民間銀行が中央銀行に持つ預金、つまり中銀当座預金も通貨の相当部分を占めている。

個人が現金を手にするには、ATMなどを通じて銀行預金を取り崩すのが一般的だ。それに備えて民間銀行が手元に準備しておく現金は、中銀当座預金を取り崩すことで、中央銀行から入手する。つまり一般の個人が手にする現金は、中銀当座預金から生じているといえる。

さらにその中銀当座預金は、中央銀行が民間銀行から国債などの金融資産を買い入れる、あるいは中央銀行が民間銀行に資金を貸出すことなどから生まれるものだ。これが、中央銀行が中銀当座預金、現金といった通貨を作り出すメカニズムだ。

民間銀行が通貨(マネー)を作る「信用創造」

ところが通貨を作り出すことができるのは中央銀行だけではない。民間銀行も自ら通貨を作り出すことができる。銀行預金は商品を購入した場合などの支払い、つまり決済に使うことができるという点で、現金と同様に通貨である。現金や中銀当座預金は中央銀行が作り出すことができる通貨で、中央銀行の債務だ。一方で銀行預金は民間銀行が作り出すことができる通貨で、民間銀行の債務である。民間銀行がその銀行に預金口座を持つ企業や個人に貸出をする際には、預金口座に入金をするという操作を行うだけで完了し、その貸出原資は入金した預金の増加分となる。銀行預金という債務を民間銀行自らが作り出すこのメカニズムは、「信用創造」と呼ばれる。

民間銀行が預金額の一定比率を中央銀行の当座預金に積んで置くという預金準備制度がなければ、こうしたメカニズムのもとで民間銀行は、無制限に預金という通貨を作り出すことが可能となる。

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