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不人気だったブドウが 飛ぶように売れ始めた「たった一言」 分かりますか?

6/14(木) 18:40配信

NIKKEI STYLE

■飛ぶように売れ始めたきっかけは1枚のPOP広告

 「なぜ売れないのだろう?」

 彼はその理由を探すため、売り場のお客さんをずっと眺めています。そこは某地方都市のスーパーマーケット、彼は売り場の責任者。彼が自信を持って仕入れた「おいしいブドウ」の売れ行きがよくありません。売り場を見ると、何人ものお客さんがそのブドウを手にするものの、そのまま棚に戻しています。どうやらお客さんは、全く関心がないというわけでもなさそうです。

 ここで彼はブドウのそばに手書きのPOP(商品小脇に添える、立て札風のミニ広告)を1枚置きました。するとブドウは突然売れ始めたそうです。

 さて、彼はそのPOPに何と書いたのでしょうか? 読者の皆さんも考えてみてください。あなたならブドウを売るために何を書きますか?

 ふつうなら「甘くておいしい」とか「もぎたて新鮮」などと書くのではないかと思います。 しかし彼は違いました。お客さんをよく観察した末に、こう書いたのです。

 たった一言、「タネなし」と。

■「損失を避けたい」という心理をビジネスに生かす

 ブドウを売るにあたって「甘くておいしい」と書くか、それとも「タネなし」と書くか。読者の皆さんは、そこに大きな違いがあることにお気付きでしょうか?

 「甘くておいしい」は商品のよさをアピールし顧客に訴えています。これに対し「タネなし」は顧客の困りごとを取り除いています。

 メリットを訴えるのか、それともデメリットを取り除くのか。心理学的には後者のほうが2~2.5倍効果があるとされています。これを「損失回避」といいます。

 人間は1万円を拾う喜びより、1万円をなくす悲しみのほうが2~2.5倍大きい。よって悲しみを避けるべく行動するというのが「損失回避」の心理。だとすればビジネスでも「メリットをアピールする」より「デメリットを回避する」メッセージのほうが効果的、よって「甘くておいしい」より「タネなし」のほうが効くというわけです。

■人生にもビジネスにも正攻法と奇襲がある

 この例で「甘くておいしい」は、商品アピールの域を出ていません。そこには「買ってください」という自己中心的な売り込み姿勢があります。これに対して「タネなし」の一言は、お客さんの立場に立って、その困りごとを取り除いています。

 自らをアピールするのはビジネスの王道たる正攻法。対して顧客の困りごとを回避するのが、いわばビジネスの奇襲です。私はこの連載で彼のような「ビジネス奇襲」を提案したいと思います。

 よいモノをつくり、その優れた点をアピールし、低価格で売るのがビジネス正攻法。対して「たった一言」の力で顧客満足を達成するのがビジネス奇襲です。

 戦争に正攻法と奇襲があるように、ビジネスにも、そして人生にも正攻法と奇襲があります。私たち日本人は正攻法が大好き。主として正攻法の努力は「自らを高める」ことに向けられます。子どもであればまじめに勉強し、働く大人たちは一生懸命にビジネススキルを学びます。ビジネスの現場ではひたすら、「よいモノをより安く」提供する努力をします。

 これらはすべて「自らを高める」というアプローチによる、正々堂々の正攻法的な努力です。これに対し私が新たに主張するビジネス奇襲は「相手の立場に立って考える」ということが出発点になります。

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最終更新:6/14(木) 18:40
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