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米朝首脳会談の「落としどころ」は日本にとって最悪だった

6/14(木) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 「大山鳴動して鼠一匹」とは、まさにこれだ。米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談が行われた。両首脳は、(1)「米国と北朝鮮の新たな関係の樹立を約束」(2)「朝鮮半島の持続的かつ安定的な平和構築に共に努力」「北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けた作業を行うと約束」「戦争捕虜、戦争行方不明者たちの遺骨収集を約束」の4項目で合意し、文書に署名した。しかし、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)という表現は明記されず、全ての項目において、「いつまでに、どのように実現するか」の具体策は示されなかった。

 本連載が主張してきた「米国には決して届かない短距離・中距離の核ミサイルが日本に向けてズラリと並んだ状態でとりあえずの問題解決とする」(本連載第166回)という状況が出現する。「史上最大の政治ショー」が起こるかのように大騒ぎした割には、何一つ決まらなかった。「落としどころ」は至って平凡で、日本にとっては最悪なものとなった。

● トランプ大統領は「拉致問題提起」を 日本からカネを引き出すために利用した?

 首脳会談終了後の記者会見で、トランプ大統領は「完全な非核化」実現のために「圧力は継続する」と述べた。また、首脳会談で「日本人拉致問題」を提起したという。安倍晋三首相はこれを高く評価し、感謝の意を表した。後は、首相自らが動いて「日朝首脳会談」を開催し、拉致被害者を取り返すだけとなった。

 だが、トランプ大統領は記者会見で「非核化のための費用は、日本と韓国が出す」とも述べた。「圧力を継続」と言いながら、非核化のためという名目で日本に「カネを出せ」とクギを刺したということだ。これで安倍首相は日朝首脳会談に「手ぶら」では行けなくなった。

 安倍首相は、日朝首脳会談の開催前から、拉致問題を首脳会談で提起するように、トランプ大統領に積極的に働きかけてきた。そして、そのことを日本国民に対してアピールし続けてきた。トランプ大統領も安倍首相に会うたびに「シンゾー、任せろ。必ず金正恩に話す」と応え、実際に会談で提起したという。拉致被害者の会の皆様は「これが最後のチャンス」と切なる思いで見守っている。いまさら安倍首相が平壌には行かないと言い出せない状況になっている。

 この連載は、「北朝鮮との融和」は拉致問題を動かす好機と指摘してきた(前連載第1回)。そして、今回はこれまでとは違い、本当に拉致被害者を少なくとも数名取り戻せるかもしれないと考えている(第181回)。実際に、そういう状況が出現したといえるかもしれない。だが、それは日本が「非核化のためという名目でいくらカネを出すのか」を提案することと、バーターとなっているのではないだろうか。

 日朝首脳会談で、北朝鮮に非核化のためのカネを出すことを決めれば、その見返りに拉致被害者が2~3人帰国するかもしれない。もしそうなったら、日本の世論は歓喜するだろう。だが、北朝鮮に渡すカネが、本当に非核化のために使われるかどうか、わかりはしない。逆に、日本が渡すカネが「最大限の圧力」が形骸化するきっかけとなる懸念もある。しかし、その時、拉致被害者を返してもらった日本政府と国民は、北朝鮮に面と向かって厳しく批判できるだろうか。

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