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専業主婦「驚異のネットワーク」の構造的不安

6/19(火) 6:00配信

東洋経済オンライン

新聞記者を辞めた後、会社員と女性活躍に関する発信活動、さらに大学院生と3足のわらじを履きながらバリバリ働いてきた中野円佳さん。ところが2017年、夫の海外転勤により、思いがけず縁遠かった専業主婦生活にどっぷり浸かることに。そこから見えてきた「専業主婦」という存在、そして「専業主婦前提社会」の実態とそれへの疑問を問い掛けます。
前回、専業主婦の家事・育児が高度化していることについて書いたが、その原因の1つに同調圧力や横並び意識、対抗意識などにより際限なくレベルが上がってしまうことがあげられる。今回はその「専業主婦コミュニティ」について考える。

■ママ友と2人、道路で泣きそうになった日

 シンガポールでのある朝、自分の子どもたちを幼稚園に送っていった後のこと。大通り沿いの横断歩道の向こうに、ママ友が立ち往生しているのが見えた。脇にはベビーカーと、ベビーカーに乗っておらずそれぞれ別の方向に動こうとする2歳と4歳。

 いつもニコニコしている彼女が苦戦している気配を感じ、「あれ、ベビーカー乗ってくれないのかな。幼稚園行きたがらないのかな」と思った。空のベビーカーを押しながら二人と手をつなぐのは物理的に手の数がたりないので、大通りを渡るのは怖い。急いで横断歩道を渡り、しかし呑気に「おはよ~」と声をかけた。

 ママ友は、私を見るなり、「あっまどかさん」とこわばっていた顔をゆるめ、泣きそうな顔になった。私の肩に手をおき、一瞬だけよりかかるようにしてうつむくと「なんか、ホッとしちゃって…ごめん」と言った。本当に涙が出かかっていたのかもしれない。

 一息ついて、彼女はもう大丈夫、というように顔を上げ、「医者にいかないといけないんだけど、車に断られちゃって」といつものように微笑んだ。

 「だめだね、余裕なくしちゃって」。

 シンガポールは配車タクシーシステムが便利だが、子連れだとチャイルドシートがないからと断られるケースがある。彼女が流しのタクシーを拾い、ベビーカーを乗せる間、子どもたちと歩道で待った。3人が窓から笑顔で手を振るのを見送ってから、彼女の手のあたたかさがまだ肩に残っているように感じて、なぜか今度はこちらが泣きそうになった。

 シンガポールではタクシーやGrab(配車システム)が安価で気軽に使え、日本のママたちに比べればめちゃくちゃ恵まれている。だが、私たちは日中、しばしば、母子だけで、世界に放り出されている。昼間のふとした苦戦の瞬間、一人ぼっちで幼い子どもたちを守らないといけない重責。そこに父親はいない。

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