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史上最古のパンダのDNAを解析、亜熱帯に適応か

6/20(水) 16:43配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

中国南部で発見された2万2000年前の化石、かつての多様性示す

 2014年8月、古人類学者の張穎奇(チャンインチィ)氏率いる研究チームは、史上最大の霊長類であるギガントピテクスの手がかりを求めて、ベトナムに近い中国南部の陥没穴に調査に入った。彼らは、この自然の落とし穴に落下したさまざまな動物たちの骨を採取して持ち帰った。

写真:2万2000年前に生きていたジャイアントパンダの顎の化石

 その中にギガントピテクスの骨はなかったものの、研究チームを驚かせる発見が待っていた。2万2000年前のジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)の下顎が混ざっていたのだ。さらにその顎の化石には、世界最古のパンダのDNAが残っていたことが、6月18日付けの学術誌「Current Biology」で明らかにされた。

 この遺伝的な証拠は、下顎の持ち主が現在のジャイアントパンダの多様性の中に収まらず、18万3000年前に別の道を歩み始めていたことを示している。

 論文の著者らは、このパンダが亜熱帯での暮らしに適応していた可能性があり、かつてはジャイアントパンダがはるかに多様な環境に適応していたことを示している、と結論づけた。

 パンダの多様性に関するこうした推論はさほど目新しくはない。だが、状態のよくない化石から古代のDNAを抽出するという成果はすばらしいものだと、米アイオワ大学の古人類学者、ラッセル・ショホーン氏は言う。

「わたしたちは気温の高い土地で、しかもかなり古い骨から古代のDNAを入手するという可能性を開きました」と、論文の共著者で、サンプルの遺伝分析を担当した遺伝学者の付巧妹(フー・キアオメイ)氏は述べている。

「極めて特別な情報です」

 現代のパンダは、中国中央部の四川、陝西(せんせい)、甘粛(かんしゅく)の3省のみという狭い範囲で暮らしているが、かつては広く分布していたと考えられている。古代のパンダ類の化石はこれまでに、中国、ミャンマー、ベトナム北部から、遠くハンガリーやスペインでも見つかっている。

 中国南部の広西チワン族自治区から今回の化石を回収したとき、張氏のチームは、パンダが絶滅した土地で発見したことを大いに喜んだ。ただし、化石は現代のパンダのものによく似ており、またそれが完全な頭骨ではなく、ごく小さな欠片だったことから、それ以上くわしく調べなかった。

 それから1年半の間、化石は北京・中国科学院の張氏の研究室の片隅に、トイレットペーパーにくるまれた状態でプラスチックの箱にしまい込まれていた。

 そのころ、同じく中国科学院の研究員である付氏は、ほかの化石からパンダのDNA抽出を試みていたが、数年間、成果を出せずにいた。中国南部の暑さと湿気のせいで、DNAのらせん構造が破壊されてしまうため、作業は困難を極めていた。

 付氏はその後、新たなパンダの化石の分析に取り掛かったが、一度目の試みは失敗に終わった。「それでも、わたしはもう一度やってみようと粘りました」と付氏は言う。

 研究チームは化石の欠片をCTスキャンにかけ、蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる、カタツムリの殻のような形をした内耳器官の場所を確認しながら分析を進めた。人間の場合、状態のよいDNAが蝸牛に残されていることが多い。この二度目の挑戦で、チームは完全なミトコンドリアゲノムの解析に成功した。

 これは画期的な成果だ。取得できたDNAのデータは「極めて特別な情報です」と付氏は言う。

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