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賃貸か購入か? 新築か中古か? 一戸建てかマンションか? 不動産執行人が考える「ベストな選択」

6/24(日) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

<不動産執行人は見た6>

 私の生業の一つは、不動産執行のサポートである。

 家屋の取り壊し費用やリフォーム改修費用も発生しない土地のみという競売物件には需要も大きい。

 土地のみの調査の場合は主に図面上のサイズと相違がないか、不法投棄物の有無、越境や地中配管の位置取りといった隣家との境界トラブルが重点的に調査される。

 また債務者立ち会いでないことが多く、この日の不動産執行も不渡りを出してしまった地元中堅企業は夜逃げ同然の状況で、立会に出向くものはいなかった。

 人気駅から徒歩5分圏内の好立地で周辺環境も極めて良く、最近まで駐車場として使われていたようで植物による侵食もなし、地盤も良好なうえ敷地面積も広いという珍しいほどの良物件。

 土地自体に落ち度はなく、高額落札も期待できる。

 ちなみに、このような良物件には業者の入札が殺到するのだが、残念ながらせっかくのゆとりある広い土地も購入した業者により驚くほど細切れにされてしまう。

 理由はもちろん消費者に購入しやすい価格帯の物件を用意するためだ。

 そのため近年の首都圏売れ筋不動産は敷地面積を極限まで狭く切り、上モノを小さな3階建てにしてなんとか居住空間を確保。そんな、苦肉の策で手が届く価格帯が維持された状況がズルズルと続いている。

 この傾向はお値段据え置きで内容量が徐々に少なくなるスナック菓子と重なる。

 逆に人口減地域では自治体が主導する形でゆとりある敷地面積と低価格を売りにした見栄えの良い住宅地を設け人口減に歯止めをかけんとしているが、今の所思惑通りにことが推移している地域を見たことがない。

 さて、その日訪問した物件では、一点だけ気になる部分があった。

 地中の水道管が隣家の直下を不自然な形で通過しているため、隣家となんらかのトラブルを抱えている可能性があったのだ。

 このようなケースでは執行官が競売や差し押さえ案件であることを伏せ、隣家を直接訪問し話を聞く。

 物件裏に隣家があったのだが、首都圏一等地とは思えぬ廃屋同然の長屋。入り口の引き戸には昔ながらのねじ込み式の鍵があり、施錠されている形跡はない。

 人の気配じみたものはあるのだが、呼びかけても応答がなかった。

 どう判断するか難しい状況ではあったが、執行官は入り口扉を開けてみることにした。

 小さな土間の先に六畳の一間、土間の右手には昔ながらのタイル張り流し台。雨漏りもしくは風雨の吹き込みがあるのか壁には全体的に水シミがある。内容物が超過状態にある介護用ポータブルトイレの隣に置かれた介護用ベッドの上に、80代後半と見られる女性がちょこんと座っていた。

「水道管についてちょっとお伺いしたいのですが」

「水道? そんなものうちにはないよ」

 確かにその家に水道はなく代わりに小さな庭の角には井戸を囲ったプレハブの小さな小屋があった。

 水道はないという回答を得たため、調査は終了となったのだが、さすがに執行官も心配したらしく少し話をしてみると、この廃屋同然の長屋は賃貸住宅であり、保守管理が放棄されたまま数十年が経過。今更文句を言って追い出されても行く宛がないため、死ぬまでこのままにするしかないとのこと。また、賃料もなかなかのお値段で年金の中から工面しているという。

 なお、身寄りはなく週に1~2回だけヘルパーさんが様子を見に来てくれる生活が長らく続いており、おそらく今後も続く。

◆持たずに借り続けることが大きな負債となることもある

 不動産関連の業界に片足を突っ込んでいると、よく質問されるのが、賃貸にすべきか購入すべきか、マンションにすべきか一戸建てにすべきなのかという問題だ。

 こういった質問をしてくる時点で自分の考えが裏付けされることを望んでいる。もちろんそれは否定しない。

 ただ、この仕事をしているとわかるのが、日本の木造住宅は想像以上に耐久性があるということ。

 悪徳リフォーム業者の存在でも分かるように、実際はリフォームも定期メンテナンスも屋根の張替えも外壁塗装も特段必要はない。

 業者が様々な不安を煽ってお金を使わせようとしているだけだ。ノーメンテナンスで生涯を終えていく人は山ほどいる。

 それでも心配ならYouTubeでメンテナンスや補修の方法を見ながらDIYでやってみればいいだろう。

 賃貸であれ購入であれマンションであれ一戸建てであれ、大抵の人は新築あるいは築年数の浅い素敵で綺麗な物件を念頭に置き、夢の暮らしを膨らませている。

 ここで一つ思い描いてみて欲しい。自分の人生が立ち行かなくなる可能性、突然病魔に襲われる可能性、何らかの理由で借金を背負う可能性。

 その時、手元にある資産と呼べるものはなんだろう。最後に頼れる資産はなんだろう。まだ人々が不動産に価値を見いだせている以上、不動産を担保にお金が借りられる以上、不動産は大きな資産だ。人生に躓いた時に何らかの助けになる。購入とはそういうことだ。

 そして、付加価値とブランディングがあろうがマンションは切り売りでしかない。途中売却の意図があり立地的利便性を一時的に求めているのであれば良いが、終の棲家とするには保守管理費や修繕積立金は住宅ローンが払い終わった後も無限に続く。

 今や少しお金を貯めれば現金一括購入も可能な首都圏通勤圏内の中古戸建ては山ほどある。

 ありがたいことに現状の固定資産税は築年数が経過した戸建てをほぼ無価値と判断してくれる。例えば首都圏近郊の駅徒歩15分という極小住宅であれば年間に支払う固定資産税が1万円以下というものもある。

 収入は細りながらも時間的ゆとりは増え、さらに「コスパ」という考え方が勢いを増す今、豪華な物件で住宅ローンや管理費に縛られながら生きることにそろそろ異論が出てきても良いのではないだろうか。

 雨風がしのげれば良い。家族あるいは独り身で慎ましくも楽しく暮らせれば良い。人生の窮地を迎えても寝起きできる場所さえあれば良い。

 抱える負債は少なければ少ないほど、人生に躓く可能性は軽減出来る。

 物を持たないという生き方が長らく人気のようだが、その生き方は本当にコスパが良いのだろうか。持たずに借り続けることが大きな負債となることもある。

 流行り言葉に踊らされ、むやみに資産価値のあるものを捨てていくことは、身軽になりさえすれば良いと服を脱ぎ捨て、裸で茨の森へと突き進むに等しい行為ではないのだろうか。

【ニポポ(from トンガリキッズ)】

ライターの傍ら、債務者の不動産を競売にかける『不動産執行』のサポートも行う。2005年トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。

Twitter:@tongarikids

オフィシャルブログ:団塊ジュニアランド!

動画サイト:超ニポポの怪しい動画ワールド!

ハーバー・ビジネス・オンライン

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