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博打に勝った西野監督、腹の括り方に感嘆。8強も見据えた先発変更、最善の形で決勝Tへ【西部の目/ロシアW杯】

6/29(金) 8:40配信

フットボールチャンネル

 現地時間28日、日本代表はロシアワールドカップ・グループリーグでポーランド代表と対戦した。0-1でリードを許して迎えた後半終盤、日本は自陣でボールを回して試合を終わらせた。コロンビアがセネガルに勝利したため、日本は2位で決勝トーナメント進出を決めた。0-1でのクローズは一種の賭けだったが、西野朗監督は腹を括っていた。(文:西部謙司)

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●「塩漬け」を試みた日本。合意したポーランド

【日本 0-1 ポーランド ロシアワールドカップ・グループリーグH組第3節】

 82分、長谷部誠が3人目の交代選手としてフィールドに入る。日本はポーランドに1点負けていた。コロンビア対セネガルは1-0でコロンビアのリード。2つの試合がこのまま終わり、日本がイエローカードをもらわなければフェアプレーポイントの差でグループリーグ突破が決まる。長谷部はプレーを終わらせるためにフィールドに出ていた。

 打ち方やめ。日本の様子を見てポーランドもこのゲームの「塩漬け」に合意する。ポーランドは1勝を持ち帰り、日本はベスト16を手にする。ただし、残り10分強でセネガルが同点にしなければの話だが。

 長谷部は伝令の役割を果たし、日本対ポーランドは実質的に終了する。あとはコロンビア対セネガルの結果次第。西野朗監督はコロンビアの勝利にすべてを賭けた。この割り切りはなかなかできないと思う。ポーランドの合意を得るのは難しくないとしても、コロンビアがそのまま勝てるかどうかは誰にもわからない。実際、試合の流れからしてセネガルが同点に追いついても不思議ではなかった。

 もし、これでグループリーグ敗退なら、6人のメンバー変更も含めて西野監督と日本代表は大バッシングを受けていたかもしれない。談合試合は褒められたことではないが、西野監督の腹の括り方には感嘆した。

●先発6人変更とW酒井が形成した右サイド

 コロンビア、セネガル戦と続いた先発メンバーから6人を入れ替えた。昌子源に代わって槙野智章、ロベルト・レバンドフスキとマッチアップした。長谷部のポジションには山口蛍。前線は大迫勇也、香川真司から岡崎慎司、武藤嘉紀の2トップへ。左のワイドは乾貴士ではなく宇佐美貴史、右には酒井高徳が起用された。右サイドは酒井宏樹とのW酒井である。

 ポーランドはサイドからしか攻めてこない。W酒井はポーランドの左サイドを封鎖する意思がはっきり表れていた。逆サイドも守備を考えれば宇佐美よりも他の選択肢があったが、こちらは攻撃の手を残したかったのだろう。それにしてもかなり思い切ったメンバーチェンジだ。疲労度と日程を考慮しての人選だろうが、決勝トーナメントへの布石ともいえる。ベスト8入りの意欲満々なのだ。

 立ち上がりの日本はボールが足に付かない。ただ、ポーランドもそれは同じで12分にはペナルティーエリア内でプレゼントパスをもらって岡崎のヘディングシュートまで持っていく。13分には武藤がカットインからシュート。W酒井に左を閉じられたポーランドは右から攻め、32分には決定的なヘディングシュートを放つが、GK川島永嗣がファインセーブ。どちらもパスワークがぎこちなく、日本は宇佐美、武藤に強引さが目立つ。得点への意欲はわかるが、自分の形に持っていこうとするためかアイデア不足は否めない。

 ポーランドのビルドアップはクリホビアクを抑えてしまえば機能しない。ここは岡崎が警戒してフリーにしなかった。ビルドアップを阻害し、サイドを封鎖してしまえば、最大の脅威であるレバンドフスキにボールは渡らない。前半0-0は想定内だろう。

●博打に勝った西野監督と日本代表

 後半開始早々に岡崎が負傷交代、大迫が入る。このタイミングでの交代は想定外だと思う。さらにポーランドの逆襲がハマりはじめていた。53分のロングカウンターはレバンドフスキへラストパスが入る寸前でGK川島がインターセプト。74分にはカウンターで日本の左サイドを攻略され、レバンドフスキにシュートされるがバーの上。さらにクロスボールを槙野がカットするが、危うくオウンゴールになりかける。こちらも川島が防いで事なきを得た。

 レバンドフスキがほとんど守備をしないポーランドに対して、山口と柴崎岳が相手2トップの脇に下りてパスを集配、ビルドアップは問題ない。ただし、そこからバイタルエリアへのパスが通らず攻撃は停滞する。宇佐美を乾に代えてテコ入れを図るが、さほど事態は好転せず。

 そのころコロンビアが先制点をゲット、日本は最後の交代カードとして長谷部をフィールドへ送る。長谷部の投入に戦術的な意味はない。この試合を凍結するための伝令だ。失点しないこと、カードをもらわないこと、そしてロスタイムを含めると10分間ほど残っているこの試合をここで終わりにする意思をポーランドに知らせること。あとはコロンビア対セネガルがそのまま終わるのに期待するのみ。他力本願だが、そうすることに決めたわけだ。

 日本の“談合試合”は2004年のアジアカップでのイラン戦でもあった。そのまま終わればどちらもグループリーグを突破できる状況で、先に打ち方やめにしたのはイランだった。今回は日本が先導した。

 グループリーグ最終戦で、このような試合になるのは珍しくない。1982年ワールドカップの西ドイツ対オーストリアは有名な出来レースである。この一件が問題視されたので、以降FIFAはグループリーグ最終戦の2試合を同時刻に行うことにした。ただ、それでも残り数分間で調整が起こることは避けられない。今回は裏カードのコロンビア対セネガルがそのまま1-0で終わる保証はどこにもなく、リスクを伴うのでただの“談合試合”とは違っている。

 結果的に日本はグループ2位で際どく勝ち抜けられた。そして主力選手を休ませ、これまでプレー機会のなかった選手を起用することもできた。実質80分間の試合で疲労も軽減できた。まさに結果オーライなのだが、最善の形でノックアウトラウンドに進めた。

(文:西部謙司)

フットボールチャンネル編集部

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