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海鳥の危機、過去60年で70%も減っていた

6/29(金) 18:43配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

 想像してみよう。南大西洋に1羽の若いアホウドリがいる。広げると3メートルにもなる翼で風に乗り、1日に800キロも滑空する鳥だ。

ギャラリー:楽園を失う海鳥

 獲物を見つけるのに絶好の場所は大抵、深い海の底をさらうトロール漁船のそば。ちょうど今、この鳥の眼下では、トロール船から投棄される魚のくずを食べようと、小型の海鳥たちが群がっている。その中に降下すれば、アホウドリは体の大きさにものをいわせてほかの鳥たちを蹴散らし、悠々と食べ物にありつけるはずだ。

 しかし着水した瞬間、そこには思わぬ災難が待ち受けている。広げた翼が底引き網のケーブルにからまり、海中へと引きずり込まれることになるのだ。冷たい波の立つ海には船の乗組員以外は誰もいない。たとえ彼らに海を眺める暇があったとしても、一瞬のうちに起きるこの悲劇に気づくことはないだろう。

海鳥は人知れず激減している

海鳥の生息数は、過去60年間で推定7割も減った。海鳥の仲間には絶滅危惧種が著しく多いため、事態はさらに深刻だ。海鳥は世界に360種いる。インコやハト、タカの仲間と比べてみると、それぞれ種の数はほとんど変わらないが、海鳥は絶滅危惧種の占める割合が大きい。

 毎年、何千羽ものアホウドリが人知れずトロール船によって命を落としているが、はえ縄漁船の釣り針にかかって死ぬ数はその10倍。ウミツバメやミズナギドリなどの死亡数が特に多い。

 刺し網漁も大きな脅威だ。魚の移動ルートに網を張って網目に刺さった魚を捕る漁法で、この海域では水面近くに巨大な網を張るため、狙った魚だけでなく、ネズミイルカやラッコ、ウミガメ、潜水する海鳥なども網にからまって命を落とす。今でも世界で少なくとも年間40万羽の海鳥が犠牲になっているという。

 漁業がらみの事故は、海鳥を脅かす二大要因の一つだが、対処は容易ではない。通常、遠洋漁業の経営状態は厳しく、当局も最低限の監視しかしない。漁船が誤って海鳥を捕獲する「混獲」を防ぐため、本格的な規制措置を導入している国は少ない。

 海鳥を守るには、第三者が漁船を監視し、できれば海鳥の混獲を減らす経済的な動機づけを漁業者に与えることが望ましい。はえ縄漁船の場合はもともと、鳥を捕まえるより、クロマグロという1匹1万ドル(約110万円)もする魚を釣りたいという、わかりやすい動機がある。

 それに加え、持続可能な漁業で捕らえた魚を高く買ってくれる市場があれば、より強い動機づけになるだろう。南アフリカの多くの漁船は、ヨーロッパなどの市場に高値で魚を出荷するために、持続可能な漁業を行っているという認証を得ようと、すでに自費で第三者の監視を受け入れている。

※ナショナル ジオグラフィック7月号「楽園を失う海鳥」は、私たちの見えないところで激減している海鳥についての驚きのレポートです。

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