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クロアチアを“殺した”デンマーク。張り巡らされた数々の策。敗退でも示したその強さ【ロシアW杯】

7/2(月) 9:50配信

フットボールチャンネル

 ロシアワールドカップ・決勝トーナメント1回戦はクロアチア対デンマークの一戦が現地時間1日に行われた。結果はクロアチアがPK戦の末にベスト8へと駒を進めた。しかし、デンマークは120分を通してクロアチアを封じ込めることに成功した。クロアチアは持ち味をまさに“殺される”格好となったが、デンマークはどのような策を張り巡らせたのか。(文:海老沢純一)

【2018年ロシアW杯】決勝トーナメント日程・結果

●DFラインからのビルドアップを封じ込める

 クロアチア対デンマークという東欧のテクニックと北欧の城壁の激突となったカードは、玄人好みの一戦になるという予感が漂っていた。そして、試合展開はまさにその通りだった。一見すると膠着した展開は面白味に欠ける印象を受けるが、ピッチ上にはデンマークがクロアチアを“殺す”ための様々な策が張り巡らされていた。

 クロアチアは4-1-4-1の布陣で、ロヴレンとヴィダというビルドアップ能力の高い2人がCBでコンビを組み、アンカーのブロゾビッチとともにモドリッチとラキティッチにつないでいく。そして、センターFWのマンジュキッチのポストプレーでタメを作り、サイドのペリシッチとレビッチが抉ったスペースにSBのストリニッチとヴルサリコが果敢にオバーラップを見せる。

 一方、デンマークは4-2-3-1の布陣で、センターFWのコーネリウスとトップ下のエリクセンがクロアチアのCBに高い位置からプレスを仕掛ける。今大会は多くのチームがハイプレスではなくミドルゾーンでブロックを作る守備を見せていたため、試合開始直後からクロアチアはデンマークのハイプレスに対応しきれていなかった。

 さらにデンマークは自陣でボールを持った際にはCBのケアーとヨルゲンセンがともに13本のロングパスを記録するなど、193cmの右WGユスフ・ポウルセンを目がけてロングボールを蹴り込んだ。そしてこのボールをポウルセンがしっかりと収めるため、クロアチアの左SBストリニッチは攻め上がることができず、最終ラインにとどめられてしまった。

●120分を乗り切った見事なペース配分

 前線からのプレスとロングボールによってクロアチアのDFラインは高い位置を取ることができず、全体は大きく間延びする。逆にデンマークは全体をコンパクトに保つことができたため、中盤でもスペースを消してモドリッチとラキティッチの自由を奪った。

 CBから思うようにボールが出ず、全体が間延びしたクロアチアはグループリーグで見せていたようなスピーディーな攻撃が封じられ、まるで別のチームのようにちぐはぐな攻撃に終始してしまった。

 加えてデンマークは、今大会初めて左SBにクヌドセンを起用した。この起用法は、クヌドセンのロングスローから高さを生かす“奇策”を狙ったもの。それは開始直後の記録上1分にヨルゲンセンが決めたゴールにつながる。直後の4分にマンジュキッチのゴールで同点をされたものの、奇襲としては十分な効果を発揮していた。

 また、ハイプレスは体力の消耗が激しいため、ワールドカップという重圧のかかる試合で90分間続けるのは難しいが、デンマークは試合中盤からトレンドとなっているミドルゾーンでの守備に切り替えた。これも効果的で、インターセプトの数を比較すると、クロアチアの10回に対してデンマークは9回だったものの、敵陣で奪った回数はクロアチアが0回でデンマークは5回。デンマークはより良い位置でボールを奪えていた。

 これによって延長戦も疲弊しきることなく乗り越えることができたため、ペース配分も見事だった。その中でもエリクセンは攻撃のキーマンでありながら、120分を通して両チーム断トツトップとなる15.4kmを走破していた。このエリクセンもまた、モドリッチとラキティッチに並んで世界レベルのMFの1人と言える。

●PK戦で敗退も19戦無敗の力を示す

 1-1のまま120分を終えた試合は、総合的に見ればデンマークのペースで進んでいたと言える。それでもクロアチアは、やはり世界最高のMFモドリッチが一瞬の隙を逃さなかった。

 115分、デンマークのクローン・デリがセンターサークル付近でトラップを失敗し、ボールが流れるとこれをモドリッチが拾って前線へ一気にスルーパスを送る。これに反応したレビッチがDFラインを抜け出し、GKをもかわして無人のゴールに流し込むかと思われたが相手のファウルによってPKとなった。

 結果的にはモドリッチのPKはデンマークのGKキャスパー・シュマイケルのビッグセーブによって止められたものの、劣勢の中で一瞬の隙を突いた技術と判断力は世界最高レベルであることを証明していた。

  PK戦へともつれ込んだこの試合は、スバシッチとシュマイケルの両GKで5本ものシュートがストップされる白熱の展開となった。結果的にスバシッチが3本を止めたクロアチアに軍配が上がったが、デンマークのパフォーマンスも敗戦に値するものではなかった。

 ゴールシーンだけではないサッカーの醍醐味を存分に見せてくれたデンマーク。この一戦もPK戦での敗退だけに公式記録上は引き分け。これで国際Aマッチ19試合無敗を継続することとなったが、それが実力によるものであることは存分に示した。

(文:海老沢純一)

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