ここから本文です

指揮者・西本智実「隠れキリシタンの末裔」として復元した祈りの歌

7/2(月) 16:01配信

女性自身

世界最大級の教会堂、バチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂の、ローマ法皇の名によるミサの開始を告げる澄んだ音色のベルが鳴り響いた。ルネサンス時代やバロック時代の第一級の芸術家が造営に携わった壮麗な大聖堂の一角に、約300人の日本人を中心にした合唱団が控えている。

彼らの前で、黒の礼服に身を包んだ長身の女性が静かに佇み、ミサの進行を見守っていた。168センチの長身、彫りの深い端正な顔だち。指揮者・西本智実さん(48)だ。合唱団のメンバーを見回すと、大きく優雅に、両手を広げ、手と指先がゆったりとしたテンポで柔らかに舞う。厳かに大合唱が始まった。

日本人による祈りの歌は、『ラウダーテ・ドミヌム』『ヌンク・ディミッティス』『オー・グロリオーザ』の3曲――。

それは、ヨーロッパのカトリック教会で古くから歌われ、クラシック音楽の原型にもなったといわれるグレゴリオ聖歌だった。それがなぜか、ヨーロッパから遠く離れた日本の長崎県の生月島にひっそりと残っていたのだ。隠れキリシタンが450年にわたって伝え、日本語として唱えてきた祈りの歌「オラショ」として。

その原曲であるグレゴリオ聖歌を西本さんが復元演奏し、オラショがカトリックの総本山、サン・ピエトロ大聖堂でよみがえったとき、枢機卿も大司教も、神父たちも口々に「これは東洋の奇跡だ!」と言った。'13年11月のことである。

「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が6月30日、ユネスコの世界遺産に登録されることが決定した。長崎市の「大浦天主堂」や南島原市の「原城跡」など史跡に加え、「平戸の聖地と集落」も世界遺産として登録される。

世界遺産に含まれる見込みの平戸市の中江ノ島はオラショを伝えてきた生月島に暮らしてきたキリシタンたちの聖地だ。平戸市長の黒田成彦さんは、こう話す。

「江戸時代、キリスト教弾圧期の260年間、密かに信仰を受け継いできた潜伏キリシタンの集落に価値があるということで、平戸も候補となりました。平戸が認定されるために重要な役割を担ったのが、隠れキリシタンの存在であり、信仰心を保つ支えとなったオラショを唱える儀式だったんです」(黒田さん)

西本さんは、生月島に隠れキリシタンの伝承があるということを、バチカンでの演奏を通じて、世界に知らしめた。それは生きるために欠かせなかった信仰を、命がけで守ってきた隠れキリシタンの心を伝えるものでもあった。

1/2ページ

最終更新:7/2(月) 16:20
女性自身

記事提供社からのご案内(外部サイト)

女性自身

光文社

2829合併号・7月10日発売
毎週火曜日発売

特別定価440円(税込)

宮沢りえ極秘通院 再婚で始めた45歳の妊活
桂歌丸さん最後の言葉 妻に初めて伝えた…
麻原彰晃三女危険な予言 死刑で父は神に…