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今大会、ブラジルは違う。どこが違うのか? 守備の統率と攻撃の変化。完成度は近年最強に【ロシアW杯】

7/3(火) 8:36配信

フットボールチャンネル

 ロシアワールドカップは現地時間2日、決勝トーナメント1回戦が行われ、ブラジル代表がメキシコ代表を相手に2-0と圧勝で勝ち上がった。これまで毎回優勝候補に挙げられながら、02年日韓大会以来決勝に進めていないブラジルだが、今大会の強さは何かが違う。(文:海老沢純一)

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●メキシコの奇襲にも動じることなく

 ブラジルは強い。それ自体はいつの時代でも常識である。ただ、今大会のブラジルは違う。どこが違うのか。

 スイス、コスタリカ、セルビアと同組のグループを勝ち上がったブラジルは、ドイツ、韓国、スウェーデンという厳しいグループを突破したメキシコと対戦する。メキシコは特に前回王者ドイツを破っているだけに、再び波乱を起こす予感を持っていた人もいたはず。

 メキシコは、ドイツ戦を再現するかのように立ち上がりから積極的でスピーディーな攻撃を仕掛けた。開始2分には左サイドからグアルダードがクロスを入れて早くもチャンスを作り出した。

 このメキシコの攻勢は25分近くまで続く。ここまでのシュート数を見ると、メキシコの4本に対してブラジルは1本。まだ完璧に試合に入りきれていない立ち上がりに先制、前に出てきたところをカウンター。メキシコは、そういった青写真を描いていたに違いない。

 ところがブラジルは崩れない。メキシコの奇襲ともいえる攻撃を受けても、失点する気配は一切なかった。そして、この立ち上がりを切り抜けると、試合は完全にブラジルのもの。ハーフタイムまでのシュート数は一転してブラジル8本、メキシコ1本となっていた。

 ブラジルの得点は時間の問題。メキシコのGKオチョアの力はやはり光っていたものの、そう思わせるには十分の前半であり、後半開始まもなく、得点は決まる。

●まさに鉄壁。守備のトライアングル

 左サイドでボールを受けたネイマールが中へ切り込み、中央でウィリアンにスイッチ。ボールを受けたウィリアンがグラウンダーのクロスを入れると、ファーサイドに滑り込んだネイマールがゴールへ押し込んだ。

 さらに88分、フェルナンジーニョのスルーパスを受けたネイマールがゴール前で出したパスにフィルミーノが合わせて2点目。結局、ブラジルは力の差を見せつける格好でメキシコを相手に2-0と圧勝を遂げた。

 2002年の日韓大会の優勝以降、ブラジルはロナウド、ロナウジーニョ、カカ、アドリアーノ、ロビーニョなど世界有数のアタッカーを有しながらチームとしての完成度は十分とは言えず、決勝にたどり着くことはできなかった。特に自国開催となった前回の14年大会はドイツとの準決勝で7失点を喫して崩壊。続くオランダとの3位決定戦でも0-3と大敗で大会を通して14失点を浴びていた。

 しかし、今大会は違う。何よりもCBのチアゴ・シウバ、ミランダ、アンカーのカゼミーロによるトライアングルはまさに鉄壁。今回のメキシコ戦でも立ち上がりに猛攻浴びてもこの守備陣が崩れる気配はなく、のちの反撃につなげている。

 このトライアングルの役割は、まずカゼミーロが豊富な運動量を生かしてDFラインの前に立ち、ハードなタックルで相手の攻撃スピードを遅らせる。この試合でも8回のタックルを繰り出し、チーム最多の9.47kmを走った。

 そして、カゼミーロがボールを奪うとチアゴ・シウバとミランダが完璧にボールを跳ね返す。過去にも世界に名高いDFが名を連ねたブラジルだが、組織力という点では今大会は随一といえる。

●攻撃は決勝トーナメントで1ランク上に

 また、守備面だけでなく決勝トーナメントに入ってからチームはもう1ランク上に達していた。グループリーグでは右ウイングのウィリアンが守備に奔走した結果、攻撃のほとんどがネイマール、コウチーニョ、マルセロ(フィリペ・ルイス)の左サイドからだった。コスタリカとの第2戦ではドグラス・コスタがウィリアンと交代で入り、右サイドを切り裂いたことで得点を生んだが、その後負傷。交代のカードを失っていた。

 ところがこの試合ではウィリアンが攻撃面で大きな貢献を示した。ドリブル突破ではネイマールの2回を大きく上回る7回を記録し、7本のクロスと3本の決定的なパスを繰り出した。そして先制点をアシスト。データサイト『Who Scored』によるレーティングでは、FIFAのMOMネイマールの8.57よりも高い9.27を付けられた。

 ウィリアンが攻撃で力を発揮できた背景には、右SBファグネルの変化がある。ダニーロの負傷によってコスタリカとの第2戦から起用されたファグネルだが、セルビアとの第3戦と2試合合計でタックルもインターセプトも3回だった。ところが、このメキシコ戦ではタックル5回、インターセプト3回と1試合で2試合の合計を上回る数字を記録した。

 ファグネルが守備の意識を高めたことで、ウィリアンの負担が減り、攻撃にも力を注ぐことが可能となった。ここまでネイマールは徹底的なマークに苦しむ中で、それでも結果を残してきたが、相手チームにとって今後は逆サイドのウィリアンにも注意しなければならず、より守りにくくなるはず。

 ベルギーとの準々決勝に向けて唯一懸念があるとすれば、カゼミーロが累積警告で出場停止となること。しかし、代わりとなるのはフェルナンジーニョ。このフェルナンジーニョも守備的MFとしてはカゼミーロと肩を並べる実力を持ち、ここまで全試合で途中出場しているため、試合勘やW杯の空気に慣れるという点でも不安はない。

 我々日本人としては、近年最強といえるブラジル代表と日本代表がワールドカップ準々決勝で相見えるというシチュエーションとなれば、これ以上ないほどの興奮を得られたはずだが、それはあと一歩で叶わなかった。

 終盤に勝負強さを見せたベルギーがブラジルを相手にどのような試合をするのか、これはもはや他人事ではなくなった。

(文:海老沢純一)

フットボールチャンネル編集部

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