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日本が「中国が守るシーレーン」で石油を輸入する日

7/3(火) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 これは一見荒唐無稽に聞こえる。だが、トランプ大統領は就任後、この発言通りに外交を進めてきた。例えば、

 (1)エルサレムをイスラエルの首都として正式に承認すると宣言する、米国の外交政策の歴史的大転換を行った(第173回)。

 (2)米朝首脳会談後には、「在韓米軍の撤退」の可能性に言及し、「コスト削減になる」とまで言い切った(第186回)。

 (3)米国への輸入品に高関税をかける輸入制限措置を打ち出し、中国やEUが対抗措置として報復関税を発動する貿易戦争状態となっている。

 そして(4)「イラン核合意」の一方的破棄と各国への原油輸入禁止の要求である。

 これらは、米国が構築してきた国際秩序を、自ら壊すようなものである。しかし、国際社会が混乱に陥っても、米国にとっては痛くもかゆくもない。なぜなら、「シェール革命」によって、米国が世界最大の産油国となり、石油の輸入国から輸出国に変わっているからだ(第170回・P.4)。

 米国にとって、中東の石油が必要なくなれば、もはや「世界の警察官」をやっていく意味もないということになる。米国が警察官をやめることで、中東情勢が混乱しても、米国には関係ない話になるのだ。トランプ大統領が、ホルムズ海峡からインド洋、マラッカ海峡に至る石油輸送ルートを米海軍に防衛させることを「コストが高いから、やめさせる」と言い出すリスクを、日本は考えておく必要がある。

● 「石油輸送ルート」を守る役割が 中国海軍に代わるリスクを考えるべきだ

 さらに、深刻に考えねばならないことがある。米国が中東への関心を失う一方で、ウラジーミル・プーチン大統領によって「大国復活」を目指すロシアが関与を強めている(第149回)。トルコも、「オスマン帝国」の夢よ再びと、中東の盟主の座を狙っている。そして、最も日本にとって深刻な事態となる懸念があるのは、中国の海洋進出である。

 中国は、「一帯一路構想」という国家戦略を推進している(第120回)。「一帯」とは、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」、「一路」とは中国沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」である。

 元々、地政学的には「ランドパワー」である中国が、「一帯」を推進するのはわかりやすいが、問題なのは、中国の「シーパワー化」を意味する「一路」である。これは、米国や日本など、「シーパワー」からは到底容認できないことだ(前連載第64回)。

 だが、中国のシーパワー化は着々と既成事実化しつつある。スエズ運河とつながる紅海の入り口に位置する戦略上の要衝である、アフリカ北東部のジブチに軍の補給基地を建設した。また、スリランカからハンバントタ港の99年間の港湾運営権の獲得を皮切りに、アジア・アフリカ間の港湾ネットワークを構築しようとしている。いずれ増大する中国海軍が、この港湾ネットワークを行き来するようになる可能性は高い。

 要するに、将来ホルムズ海峡からインド洋、マラッカ海峡を通る石油輸送ルートを守る役割が、米海軍から中国海軍に移ることがあるかもしれない。その時、日本はこれまで通り、中東から石油を輸入し続けることができるのだろうか。

 何度でも強調するが、トランプ大統領の「イランからの原油輸入禁止の要求」は、日本の「エネルギー安全保障」の将来を、抜本的に見直す契機としなければならない。根拠のない楽観論は、日本の将来に百害あって一利なしである。

 (立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

上久保誠人

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