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ヤブ歯科医に騙されがちな人が見落とす盲点

7/5(木) 8:00配信

東洋経済オンライン

 「自分はネットリテラシーが高いので、悪徳歯医者なんかに騙されない」

 そう思っている人は少なくないだろう。だが、これまで100人を超す歯科関係者を取材した私の実感では、かえってそういう人ほど危ない。ネットで悪徳歯医者を選んでしまった人は、相応に学歴も高く、ネット検索にも慣れている人が多かったからだ。

■逮捕されても、なぜか客が絶えない歯医者A

 今年1月、中国地方の歯医者A(50代)が、必要もなく患者の歯を勝手に削ったとして、傷害容疑で逮捕された。この男性患者を診察した別の歯医者による通報で、事件は発覚した。2月には、別の患者に対する同様の容疑で、歯医者Aは二度、再逮捕されている。

 5月から始まった公判では「正当な治療行為だった」として無罪を主張しているというが、この歯医者Aの過去をたどると、トラブルの多さは際立っている。

 約20年前、この歯医者Aに前歯4本を切断された男性患者らが、説明を求めたところ、歯医者Aは「言いがかりで業務を妨害された」とする嘘の告訴を行い、逮捕されていた(虚偽告訴罪容疑)。別の患者が、不必要な治療を受けたと訴えた時は、1億5000万円の損害賠償を患者に求める訴訟で対抗。裁判所は歯医者Aの請求を却下して、損害賠償の支払いを命じる判決を出している。

 また、「二重請求」などの不正行為や、厚生局の「監査」を拒否したとして、この歯医者Aは保険医の登録を2回取り消され、逮捕当時は「完全自費診療」しかできなくなっていた。

 トラブルばかり起こしてきた歯医者Aに、なぜたくさんの患者が集まっていたのか?  この謎に答えてくれたのは、被害に遭った患者の一人だった。

 「ネット予約ができる。土日も受診できる。そして家から近い。この条件に合ったのが、あの歯科医院でした。どのサイトを調べても、悪い口コミは見当たりませんでした」

 つまり、トラブル続きだった歯医者Aは、奇妙なことにネット上では「評判のいい歯医者」になっていたのだ。

 その患者は、常識では考えられない治療を受けていた。

 「(歯医者Aは)優しそうなニコニコしたおじさんでしたが、自分のペースでどんどん勝手に治療を進めていきました。”歯茎が腫れている”と言って、強烈な力でブラッシングをして”ほら血が出ているでしょう。もうちょっと遅かったら、取り返しがつかなかった”。そして、”噛み合わせにも問題がある”という理由で、7本の歯を削られたんです。治療費は約8000円。明細が記されていない、手書きの領収書を渡されました。心配になって、別の歯医者に診てもらったら、歯を削る必要などなかったそうです。(治療された部分の)違和感は今も残っていますし、精神的なダメージもあります」

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