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ベルギーとの差は高さではない。「抗プランB」がなかった日本

7/6(金) 13:35配信

footballista

林舞輝の日本代表テクニカルレポート第4回:日本対ベルギー

欧州サッカーの指導者養成機関の最高峰の一つであるポルト大学大学院に在籍しつつ、ポルトガル1部のボアビスタU-22でコーチを務める新進気鋭の23歳、林舞輝が日本代表のゲームを戦術的な視点から斬る。第4回のテーマは、歴史的名勝負となったベルギー戦で「2点のリードを守り切れなかった日本サッカー界全体の課題」を考察する。


文 林舞輝(U-22ボアビスタコーチ)


 一体、何が足りなかったのか?

 ベルギーに2-3の惜敗を喫したあの日から、きっとサッカーを愛する読者の皆さんも今の私と同じように、気が付けばふとぼんやりとそんなことを考えていたのではないか。

 私たちには、何が足りなかったのか?
 どうすれば勝てたのか?
 これから何をすれば、何年後に、勝てるのか?

 私が見た限りでは何度ビデオを見直しても、ピッチ上に足りないものは何もなかった。何一つとして、本当に何も、なかった。選手たちは一人残らず全員がベストを、いや、ベスト以上を出し切った。だからこそ、国全体がこれだけ盛り上がり、感動し、そして悔しさをにじませているのだろう。

 何も足りないものはなかった――だが、それはつまり矛盾するようだが、何もかもが足りなかったということだ。日本のベスト8への道のりは、果てしなく、果てしなく、果てしなく、長い。

■変則ビルドアップ、そしてルカクへの「プランB」

 序盤から、日本は優勝候補の一角とも呼び名高いベルギー相手に、真っ向勝負を挑む。ベルギーの[3-4-3]に対し、日本は通常通り攻撃時は[4-2-3-1]、守備は[4-4-2]の形でコンパクトな陣形を維持し、ミドルプレスからハイプレスを仕掛ける。一見バランスの悪そうなベルギーだが、それぞれの長所・短所を補い合う安定性を求めた組み合わせになっている。ベルギーのビルドアップは特徴的で、両脇のCBが開いて全体的に左に寄る「右SBなしの4バック」に近いような陣形を作り、そこから右CBと高い位置の右ウイングバックの間にアクセル・ウィツェルもしくはケビン・デ・ブルイネが下りてくる。3人のCB全員が高いビルドアップ能力を持っている上に、両ウイングバックが相手SBがプレスに行きづらい嫌な高さにポジションを取る厄介な形だ。

 日本はこのベルギーのビルドアップに対し、序盤からアグレッシブにプレスをかける。大迫勇也&香川真司の2枚はベルギーの3CBにプレスをかけに行くより、まずは後ろのデ・ブルイネとウィツェルへのリンクを遮断し、ベルギーの組織を前と後ろで分断させることを優先。そして、ベルギーのサイドのCBトビー・アルデルワイレルトとヤン・フェルトンゲンへの中距離の横パスを日本のハイプレスのスイッチにし、両サイドの乾貴士と原口元気が左右のCBにハイプレスを敢行、後ろの長友佑都と酒井宏樹が1つ前に出てベルギーのウイングバックへの縦パスのインターセプトを狙っていた。乾がアタックした時に長友が前にスライドせずベルギーの右ウイングバックのトーマス・ムニエがフリーになってしまった場面があったものの、ミドルプレスからのハイプレスの狙いと原則が見え、アグレッシブにボールを奪いに行く姿勢を見せた。

 日本が積極的に前から来るとは予想していなかっただろうベルギーだが、さすが百戦錬磨の一流選手がそろったチーム、組織的攻撃をロメル・ルカクへのロングボールへ切り替える。これは日本のハイプレスに対するこの時点での最善策であったように思える。

 日本がハイプレスを敢行する場合、前述のようにウイング(乾、原口)がベルギーのサイドCB(アルデルワイレルト、フェルトンゲン)にアタック、SB(長友、酒井)が前にスライドしてベルギーのウイングバック(ヤニック・フェレイラ・カラスコ、ムニエ)にアタックするので、SBの後ろのスペース(=CB横のスペース)が空く。日本のハイプレスを察したベルギーは、その前に出た日本のSBの後ろのスペースへルカクやエデン・アザールが流れ、そこにロングボールを送り込むことによってハイプレスを回避。

 その後も、ルカクがライン間まで引いたりドリース・メルテンスやムニエが中に入りボールを引き出すなど、戦術的な動きによるポジショナル・ゲームにより日本のプレスはマークがズレズレになりなかなか機能しなくなってしまい、立て続けにシュートチャンスを作られる。日本のハイプレスがハマりそうになるとルカクにロングボールを放り込まれ大迫と両ウイングが前プレスの後に必死に自陣に戻るというのを繰り返し、結果的にこれが日本が後半の早い時間でバテてミドルプレスの強度が一気に落ちる原因にもなってしまった。

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最終更新:7/6(金) 13:35
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