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VAR判定は確実にサッカーを変える―― W杯で示した「新時代のフェアプレー」

7/8(日) 18:50配信

Football ZONE web

賛否両論が残るも、試合を左右する判定をより正確に行える

 ロシア・ワールドカップ(W杯)で導入されているVAR(ビデオ・アシスタントレフェリー)には賛否両論あるようだが、この判定システムは確実にサッカーを変えると思う。

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 “機械判定”には、もともと根強い反対論があった。UEFA(欧州サッカー連盟)会長当時のミシェル・プラティニは、明確に反対の姿勢をとっていたものだ。プラティニが反対していた理由は「サッカーは人が行うもの」であり「トッププロから草サッカーまで同じであるべき」だった。判定に厳密性を求めるより、第三者に審判を頼んでいるのだから、たとえミスジャッジがあってもそれは受け入れるべきものという伝統的な考え方である。

 しかし、現実にはミスジャッジは多くの選手、ファン、関係者にとって許容できないものになっていた。簡単に言ってしまえば、サッカーが大きなビジネスになっているからだ。

 VARの利点は、試合を左右する判定をより正確に行えるようになったことである。
スペイン対モロッコのスペインの同点ゴールは、VARがなければオフサイドと判定されていただろう。事実、副審はオフサイドのシグナルを出している。

 人間の目は時に錯覚を起こすもので、特にオフサイド判定の場合は錯覚を起こしやすく、それを知ったうえで判定している副審もいる。つまり、自分の目で見えたものとは違う判定をしているわけだ。人間は機械ではないからだが、それならばいっそ機械に判定を委ねた方が正確だということがVAR採用によって明らかになったのではないか。

 フランス対オーストラリアではグリーズマンがVARによって与えられたPKを決めた最初の選手となった。今までは見逃されていたファウルがVARによって明らかになった結果、今大会はPKが多くなっている。逆にシミュレーションや悪質なファウルなどもVARによって暴かれるので、選手が審判を欺くような行為は今後減っていくだろう。

VAR導入でフェアプレーが促進されるのは確実

 おそらくVARによる最も大きな影響はCK、FKの場面だ。攻撃側と守備側で腕をつかむ、ジャージを引っ張るといった行為はこれまで半ば黙認されてきたが、VARによって記録されている以上、下手なことはできなくなった。特に守備側は即PKになりかねないので、今までと同じ守り方(ファウル)はできなくなる。

 FIFAはこれまで大会ごとにフェアプレーを呼びかけてきたが、さしたる効果はなかった。しかし、VARの導入によってフェアプレーが促進されるのは確実だ。モラルや良心に訴えかけても誰も動かなかったのに、損になると分かるとファウルをしなくなる。嘆かわしい気もするが、VARがフェアプレーの推進につながるなら結果的には悪いことではない。

 VARの欠点は、試合の進行の妨げになることだ。サッカーのジャッジは速やかな進行を善としてきた。際どい場面ごとにVARで試合が止まるのは、従来のサッカーのあり方には反している。ただ、VARで試合が止まるのはPKやレッドカードなど重要なケースに限られているので、ある程度は仕方がないと思う。これまでもそういう判定を巡って選手が主審に抗議し、もめている時間はあった。選手たちが口々に主審にアピールするよりも、VARの結果を待っている方が見苦しくないかもしれない。

 そして審判買収の防止にもなる。W杯のような舞台でまさかと思うかもしれないが、過去の大会で怪しい事例はいくつもある。VARの審判やスタッフまで買収するのは難しいうえに、映像が公開されているので誤魔化しようがない。

 サッカーは人がやるもの。その原則はVARでも変わらない。映像を見て判定するのは主審である。ただ、人が行うがために発生していたミスや不正を減らすのに、機械が大きな役割を果たそうとしている。VAR方式は、もうすぐ訪れるAIの時代を示唆しているのかもしれない。

西部謙司 / Kenji Nishibe

最終更新:7/8(日) 20:48
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