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北米最古の犬、ほぼ消滅していた

7/9(月) 18:45配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

1万年前の遺骨のDNAを現代の犬と比較、交雑の痕跡もほぼゼロ

 北米最古のイヌのDNAと、現代のイヌ5000匹以上のDNAを比較する調査が実施され、両者の関係や太古の意外な痕跡が明らかになった。

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 約1万年前、現在の米国イリノイ州コスターで1匹のイヌが死んだ。飼い主たちは、人間を埋葬する墓地に、そのイヌのための墓を作り、亡きがらをそっと横たえた。

 今なら意外には映らないかもしれないが、このイヌと、すぐ近くに埋葬されている2匹のイヌは大事な意味をもつ。論文投稿サーバー「bioRχiv」(バイオアーカイブ)に掲載された新たな研究によれば、彼らは個別に埋葬されたイヌとしては、わかっている限り世界最古のものという。しかも、彼らはアメリカ大陸にやって来た最古のイヌの痕跡を備えているのだ。

 つまり、これらの遺骸はイヌに関する大きな難問を解く鍵になる。太古の北米にいたイヌは今、どうしているのか。彼らは16世紀にヨーロッパからの入植者が持ち込んだイヌと交配したのか。現代にその子孫はいるのか。学術誌「サイエンス」に掲載されたもう1つの新しい研究では、その手掛かりを探そうと、現代と古代のイヌ両方のDNAが分析された。

 その結果、1万年前にコスターに葬られた個体を含む太古のイヌたちは、16世紀に入植者とともにやってきたヨーロッパのイヌたちに完全にとって代わられたらしいことが明らかになった。ただし、これら古代犬の痕跡は、思いがけない場所に保存されていた。それが、イヌの可移植性性器腫瘍(CTVT)だ。

 手短に言えば、古代犬の遺伝的遺産は「お尻のがんというかたちで生き続けています」と、英ダラム大学の動物考古学者で、2本の論文の著者であるアンジェラ・ペリー氏は語る。

 イリノイ州のコスター犬が出土したのは1970年代。当初調査では8500年前のものとされていたが、ペリー氏らの研究チームはこのほど骨格の年代を直接測定することで、実は約1万年前のものであることを突き止めた。つまり、アメリカ大陸で最も古い。

 コスター犬は、埋葬された世界最古のイヌというわけではない。1万4000年前のドイツの墓に、2人の人間と、深く愛されていた1匹のイヌが納められている。しかし、そのイヌのために個別の墓が作られた例としては、これまで見つかっている中でコスター犬が最も古い。

 コスター犬には食肉処理された跡がないため、食料よりもむしろ友だったのだろう。これは、初期のイヌには必ずしも当てはまらないことだ。また、埋葬されていたことは、死んだイヌへのある種の敬意を表している。ペリー氏によると、多くの場所で、イヌたちは「ごみの中に投げ込まれていました。細かい断片になったイヌの体が、そこら中にある」のだと言う。しかし、1匹ずつ葬られた犬たちは優秀なハンターであり、最も大事にされていたことを表すのだろう、とペリー氏は語る。

 カナダ、アルバータ大学所属で、今回の研究には関わっていないロバート・ロージー氏は、この発見について、アメリカ大陸で非常に早い時期から「イヌが先住民社会で非常に特別な役割を果たしていた」ことを示していると話す。「彼らは人々がともに暮らした唯一の動物であり、埋葬されていた唯一の動物でした」

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