ここから本文です

「ロックなおやじ」たちはなぜ、自殺してしまうのだろうか?

7/11(水) 13:00配信

現代ビジネス

----------
今年6月、とある大の親日家が自殺した。彼は「ちょいワルのロックおやじ」だった。そういえばザ・フォーク・クルセダーズの一員も、あの映画評論家も自殺している……「ロックは人を殺す」のかもしれない。では、一体なぜロックは人を殺すのか? ――作家・川崎大助氏が考え抜く「自殺論」の前編! 
----------

エミー賞の常連だった

 いわゆるミッドライフ・クライシス(中年期の心理的危機)のひとつと分類されるべき事象なのだろう。「なぜ『ロックおやじ』は自死を選ぶのか?」という問いが、僕の頭のなかにこびりついて離れない。あの事件の衝撃のせいだ。

 「ロックが人を殺す」のかもしれない。この問いについて、僕に可能なかぎりの文化論的考察をおこなおうとするのが、この稿だ。ではまず最初に「事件」そのものを振り返るところから始めてみたい。

 去る6月6日、アメリカの著名人、元シェフで作家、大の親日家であり、エミー賞の常連でもあるTVパーソナリティのアンソニー・ボーデインが自殺によって命を絶った。61歳だった。

 彼がホストをつとめるCNNの番組『アンソニー世界を駆ける(原題:Anthony Bourdain: Parts Unknown)』のロケ先だったフランスのストラスブール、そこのホテルの一室における突然の縊死だった。遺書はなく、(いくつかの噂はあるものの)周囲の者が察知できた明確な前兆はなく、彼が死を選んだ理由は、いまもってわかっていない。

 ボーデインの突然の死に、多くの人がショックを受けた。彼は社会的成功者だったから、ミッドライフ・クライシスから自殺する中年層の類型ではないように、人々の目には映じていたからだ。

 前述の番組内で、ボーデインはオバマ前大統領と食卓を囲んだこともある。だからボーデインの訃報に接したオバマは、ツイッターで哀悼の意を表した。

 海外ではこの件を、彼のすこし前にやはり自死したアメリカ人のファッション・デザイナー、ケイト・スペードと並べて「セレブリティと自殺」といった論調で語る意見も多い。だが、僕はこの見方にはくみしない。ボーデインは、たんなる有名人、ただの「セレブ」なんかじゃなかったからだ。

 なによりも彼は「ロックなおやじ」だった。ロック音楽とそのライフスタイルを深く愛していて、番組内でことあるごとにそれを公言していた。つまりセレブはセレブでも、「ちょいワルのロックおやじ」というのが、人々が知る彼のキャラクターであり、ファンはまずこの部分に惹かれていた。本当は優しい人なのに、すぐに毒舌ばかり口にする(したがる)ようなところをこそ、視聴者は愛した。

 僕自身も、この点からボーデインの仕事に興味を持った。「彼がロックな人だから」著作を読み、番組も楽しんだ。なぜならば僕も、12歳のときから「ロックにやられた」者だからだ。

 そのまま数十年を経て、おやじなのかおっさんなのかじじいなのか、呼びかたなどどうでもいいが、ひとりの中年男性として、まだ生きている身だから――それゆえに、ボーデインの死について、考えをめぐらせないわけにはいかなかった。まさに自分自身にもかかわる問題だったからだ。「ロックおやじの自死」というのは。

1/3ページ

最終更新:7/13(金) 11:40
現代ビジネス

記事提供社からのご案内(外部サイト)

「現代ビジネスプレミアム」

講談社『現代ビジネス』

月額1000円(税抜)

現代ビジネスプレミアムは「現代ビジネス」の有料会員サービスです。2万本以上の有料記事が読み放題!会員だけの特別記事も配信。豪華ゲストによるセミナーも開催中。

Yahoo!ニュースからのお知らせ