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アサヒの透明ビール 新入社員の野望、8年越しで実現

7/12(木) 5:00配信

日経トレンディネット

 アサヒビールは、透明な発泡酒「クリアクラフト」の2回目のテスト販売を7月下旬に行う。場所は、都内と大阪のグループ直営店4店舗で初回同様3000杯を限定販売し、売り切れ次第終了する。6月25日にスタートした初回では、1週間以内で全店舗で売り切れたという。

【関連画像】クリアクラフトが飲めるのは、都内では「BEER&SPICE SUPER“DRY”」KITTE丸の内店(左)、「スーパードライ新宿」(右)、「TOKYO隅田川ブルーイング」の3店舗。大阪は、新大阪駅北改札口直結の新なにわ大食堂にある「BW STATION」で飲める

 初回販売後に実施したアンケートでは、「夏にぴったりな爽快感」といった声がある一方、「甘みがありビールとして飲むと違和感がある」「もっとビール感が欲しい」などの課題が挙がった。「7月の販売では甘みは控えめに、よりすっきりとブラッシュアップしてお出しする」(アサヒビール種類開発研究所の大橋巧弥氏)という。

 今回は初回販売時のものを飲んでみた。グラスに注がれたクリアクラフトは、ソーダと見まがうほど完全な無色透明だが、白い細かい泡がビール感を演出している。ほんのりとかんきつ系のフルーティーな香りで、実際に飲んでみてもロゼワインのような甘さが感じられる。ワインよりもすっきりと飲みやすく、つい飲み過ぎてしまいそうだ。肝心のビールらしさは、最後に若干の苦みが感じられる程度。ビールとは別の飲み物と割り切ったほうがおいしさを楽しめそうだ。

アミノ酸を減らして匂いも色も取り除く

 飲料市場全体で透明化がブームになっており、透明のビールと言えば、サントリービールのノンアルコールビール「オールフリー オールタイム」が6月に発売されたばかり。ところが、「クリアクラフトの開発は8年前にスタートした」(アサヒビール開発プロジェクト部の西山雅子氏)という。当時、新入社員として新ジャンル飲料の開発に携わることになった西山氏は、「究極にすっきりとしたおいしいビール」を目指し透明のビールに思い至ったという。

 100回以上の試作を経て透明化には何とか成功したが、加工過程で発生する硫黄臭をどうしても取り除くことができずお蔵入りした。しかし、2017年11月に墨田区の小規模の醸造設備を使って革新的な商品を開発し直営店で販売するというプロジェクトが始まったのを機に、再び開発に着手。「8年前の知見を生かしつつ、満腹感の理由をビールづくりの原点に返って再考した結果、視覚情報以外にアミノ酸の含有量が満腹感に影響するという仮説に行きついた」(西山氏)という。

 一般的に、ビールには香りや味の厚みに寄与するアミノ酸の含有量や種類が他の酒類に比べて多いという。ビール醸造の工程で最も重要なのは発酵をすすめる酵母の増殖で、それにはアミノ酸を主成分とする栄養素を十分に加えなければならない。しかし、栄養素は味にコクを生むが、同時に重み(=満腹感)につながるという。そこで、栄養素を極力なくして酵母をほとんど増殖させず、時間をかけてアルコール発酵のみを進めることで、不快な香りを出さないことに成功したという。

 アミノ酸を極限まで減らすことで副次的な効果もあったという。従来は無色化するには脱色が必要だったが、着色を引き起こすアミノ酸に由来する化学反応がなくなったため結果的に透明になったという。「脱色すれば味や香りまで抜けてしまう。ビール類のおいしさを保ったまま透明の発泡酒を作れた」(大橋氏)。

 当初は女性をメインターゲットに据えて開発を進めていたため、フルーティーな甘みを加えた。初回のテスト販売でも、主に女性からすっきりとした甘みに支持が集まったといい、「8月のテスト販売ではビールに寄せるか、まったく別のアルコール飲料として提案するかまだ未定。味づくりについてはまだこれから。大きな反響をいただいているので、何らかの形で全国にお届けできるよう商品化を目指したい」(西山氏)

 新しいビール類の未来を願って「MS」(未来スペシャルの略)という開発記号を付け8年越しに本格始動したクリアクラフト。全国の消費者にどのような形で届けられるだろうか。

(文/北川雅恵=日経トレンディネット)