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球児を支える秘密兵器。中村奨成の「カチカチバット」誕生秘話

7/13(金) 7:20配信

webスポルティーバ

【連載】道具作りで球児を支える男たち カウンタースイング・前編

 今年で100回を迎える夏の甲子園大会。各地で大舞台を目指す高校球児を、道具作りで支える男たちにクローズアップし、紹介していく連載がスタート。その第1弾は、昨夏に甲子園の最多ホームラン記録を塗り替えた中村奨成(広陵→広島カープ)も使用した「カウンタースイング」の誕生秘話に迫る。

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「カチッ! カチッ!」

 熱心に素振りを繰り返す選手から、聞き慣れない音がグラウンド上に鳴り響く。その姿を見つめていると、すかさず指導者から説明が入る。

「ああ、“あれ“ね。去年めちゃくちゃ話題になったでしょ? 気になって、ウチでも振らせているんです」

 昨夏から全国各地のグラウンドで見られるようになった光景だ。ここでの“あれ“とは、「カウンタースイング」という可動式のコマがふたつ搭載されている素振り専用のバットを指す。スイングと同時にふたつのコマがバットの根本からヘッドに移動して音が鳴る仕組みで、その“音の回数“でスイングの良し悪しが判断できるようになっている。

 トップからタイミングよく切り返せると、ふたつのコマは密着した状態でバットの根本に残る。そしてスイングと共に移動してヘッドでコマを叩くことになり、後頭部で「カチッ!」と1回音が鳴る(これを「タマった状態」と呼ぶ)。反対に、「タマっていない」スイングだと、ヘッドにふたつのコマが分離しながら飛んでいき、「カチッ、カチッ!」と2回音が鳴る。

 昨夏の甲子園で大会記録となる6本塁打を放った中村奨成が、練習で使用していた“カチカチバット“と紹介されたことで人気に火がつき、現在は納品されるのに約4カ月待ち。押しも押されもせぬ人気商品となった。

 開発者の野田竜也(のだ・たつや)は、「息子が試合でホームランを打つ姿が見たかった」と開発の理由を振り返る。

 野田は京都の名門・平安(現龍谷大平安)高校の出身だが、野球部のOBではない。それでも、学校生活を共にした友人の多くが野球部員だったという。

「当時から仲良くしていて今でも連絡を取り合っているのは、野球部の連中がほとんど。無意識に僕のほうから彼らに寄っていったんでしょうね。やっぱり、心のどこかに野球への思いというか、心残りがあったんだと思います」

 高校卒業後、野田は建設関係の仕事へと進む。野球との接点は、休日に草野球をする程度だったが、授かったふたりの息子が野球を始めたことで“思い“が再燃する。

「息子が野球を始めた以上、親としてはやはりホームランを打つ姿が見たい。息子が試合でホームランを打つ手助け、上達の後押しができないかと考えるようになりました」

 打撃指導で頻繁に用いられる言葉に、「最短距離」や「上から叩く」といったものがある。野田は、これらの用語の認識にズレがあると感じたという。

「『上から叩くように最短距離で』『ヘッドが下がらないようにバットを立てて打て』と言われると、斜めに切るようなスイングをする人が多い。でも、そう振ってしまうと、ヘッドを振り下げるスイングになってしまいます。

『ヘッドを下げるな』と言っている指導者自らが、実際にはヘッドを下げざるを得ないスイングを教えている。おかしな話ですよね。でも、プロ野球選手が打席で見せるスイング、特にホームランを打つときの軌道を見ると、そんなスイングをしている選手は誰ひとりとしていません」

 結果を残しているプロ野球選手のスイングを真横から見ると、スイングの振り出しと同時に、ヘッドが曲線を描くような軌道でインパクトを迎える。一般的に用いられる「ヘッドをインパクトまで一直線に」というフレーズとは異なるものだ。

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