ここから本文です

セレソンは甘やかされていた。 チッチ監督は続投も、ネイマールは正念場

7/13(金) 10:40配信

webスポルティーバ

 いま、ブラジルで流行っているジョークがある。

「ブラジルがW杯で優勝できなかったのは日本のせいだ! 日本がベルギーを止めてくれなかったからさ」

【写真】VARは見た!「ダイバー」ネイマールは世間を敵に回して帰宅

 もちろん、ブラジルが負けたのは日本のせいなどでないことは承知している。ブラジルが負けたのは、ただ、ふがいなかったせいだ。だが、サッカーはブラジル人にとって人生そのもの。その失敗は死に等しい。笑い話にでもしないと、やっていられないのだ。優勝すると信じていたチームは、他のチームの単なるひきたて役にすぎなかった。

 ネイマールは世界中でからかわれ、パウリーニョはさっさと中国行きを決め、ガブリエル・ジェズスは1974年以来の、W杯で1ゴールも挙げられなかったCFとして、歴史に不名誉な名を残すことになった。

 セレソンがブラジルに帰国した際、リオの空港で彼らを出迎えたサポーターはたった56人。彼らを許すことができたのはそれだけだった。数日前、カザンの空港に8000人が詰めかけ、試合には1万6000人のサポーターがはるばるやってきたのが、まるで嘘のようだ。

 それにしても、ブラジルにいったい何が起こったのか?

 今大会、誰もがブラジルを優勝候補の最右翼にあげていた。チッチ監督のもと、ドゥンガ時代の旧弊は一掃され、この1年はほぼ負け知らず。チーム内の空気も和やかで、仲がよく陽気。ブラジルは生まれ変わった、またあの強いブラジルに戻ったのだと、みんなが信じ込んでいた。サポーターも、マスコミも、協会も、監督も、そして選手たち自身も……。 

 しかし、グループリーグ初戦から、ブラジルの調子はよくなかった。スイス戦のプレーは最低で、どうにか引き分けに持ち込み、コスタリカとセルビアにはギリギリの勝利。決勝トーナメントに駒を進めることはできたが、ブラジルが強いチームでないことは明らかだった。

 そんな成り行きに一番ショックを受けたのは、選手たちだった。これまで「すばらしいチームだ」「絶対に勝てる」とさんざん周囲からおだてあげられ、自分たちは強いと信じ込んでいたのに、結果はそれを裏付けてはくれない。選手たちはパニックに陥り、焦りとプレッシャーから、次第に感情をコントロールできなくなっていった。

 それを象徴しているのが、コスタリカ戦の後のネイマールだ。どうにか勝利を手にすると、ネイマールはピッチに膝をつき、世界が注視するなかで、まるで子供のように泣いていた。

 決勝トーナメント1回戦のメキシコ戦では少しマシになったが、本当の強いチーム、強い選手とのガチンコ勝負になった途端、つまりベルギーと当たった途端、ブラジルは負けてしまった。

 ブラジルに足りなかったもの。それは現実を見据える力だったのではないか。

 この1年間無敗だったこと、なにより前回ブラジルW杯で大敗(1-7)したドイツに、親善試合とはいえ勝利(1-0)したことは、ブラジルに過信をもたらしてしまった。まさかドイツが、これほど弱体化していたとは思ってもいなかったのだ。

 真の強豪だった時代にはとうてい及ばないのに、蝶よ花よと持ち上げられ、自分たちが世界で一番強いと思い込んでしまった選手たちは、ライバルも決してサッカーを知らない素人ではないことを忘れてしまった。ネイマールという名前なら、絶対にファンタスティックなプレーができるはずだと信じ込んでいた。

 もちろん、まるっきり実力がなかったわけではない。ブラジルが腹をくくってからは、いいプレーも見せていた。ただ、すべての試合の立ち上がり20分は、どれも最低だった。自分たちは強いという驕った気持ちを捨てきれなかったからだ。強いはずなのに思うようにプレーできない。そこで混乱し、パニックになる。感情的になる。後半は多少改善されるが、次の試合ではまた一からやり直し……。

1/2ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Sportiva

集英社

Sportivaムック
5月10日(木)発売

定価 本体1,593円+税

フィギュア特集『羽生結弦 王者の凱旋』
■仙台凱旋パレード
■平昌オリンピック名場面集
■世界選手権プレイバック