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<解説>高エネルギーニュートリノ、発生源をついに特定、何がすごい?

7/17(火) 17:42配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

40億光年も離れた銀河の超巨大ブラックホールから飛来、サイエンス誌他

 南極点の地下約1600メートルのところでとらえられた閃光が、100年前から科学者たちを悩ませてきた宇宙の謎を解き明かし、ニュートリノを利用した新しい天文学を始動させるかもしれない。

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 1900年代初頭、物理学者のヴィクトール・ヘスは、宇宙から地球に高エネルギー粒子が降り注いでいることに気づいた。私たちが今日、宇宙線と呼んでいるものだ。それ以来、科学者たちは、すさまじい高エネルギー粒子を生み出す宇宙の加速器がどこにあるのか突き止めようとしてきた。

 しかし、ほとんどの宇宙線は電荷をもち、宇宙空間のあちこちにある磁場によって進行方向を曲げられてしまう。そのため、進路を逆にたどって発生源を特定するのは困難だ。そこで科学者たちが目をつけたのがニュートリノだった。電荷をもたず、質量もゼロに近いニュートリノなら、進路を逆にたどって発生源を特定しやすそうだからだ。

 このほど、ニュートリノ追跡の先頭を走る南極のアイスキューブ・ニュートリノ観測所が、ほかの観測所と協力して、いくつかの高エネルギー宇宙ニュートリノの発生源を特定することに成功した。それは、はるかかなたの銀河だった。今回の発見により、光子以外の粒子を利用して宇宙の謎を探る新しい天文学の時代がまた一歩近づいた。

 アイスキューブの主任研究者である米ウィスコンシン大学マディソン校のフランシス・ハルツェン氏は、「宇宙の加速器をついに特定できたのです」と喜ぶ。研究の結果は3編の論文にまとめられ、7月13日付けの科学誌「サイエンス」と7月12日付けの学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報)」に掲載された。

ニュートリノを氷でとらえる

 科学者たちはこれまでにも、太陽や近くの超新星残骸から飛来するニュートリノをとらえていた。けれどもどちらの天体も、高エネルギーニュートリノを地球に投げつけてくるほどのパワーはない。

 ニュートリノはほかの物質とはごく弱い相互作用しかしないため、それを検出するだけでも非常に困難だ。今この瞬間にも、太陽から飛んできた数兆個のニュートリノがあなたの体を通り抜けている。だが、高エネルギーニュートリノは太陽から届くニュートリノよりもずっと少ない。アムンゼン・スコット基地の地下にあるアイスキューブは、体積1立方キロメートルの南極の氷に5160個の光センサーを埋め込んだ検出器だ。猛スピードで地球を通り抜けるニュートリノが、氷の中の原子核と相互作用するときに生じる小さな閃光を、この巨大なセンサーでとらえるのだ。

 2013年から今日までの間に、いくつかの高エネルギーニュートリノが南極の氷に突入し、アイスキューブのセンサーに記録された。けれども発生源の天体まで進路を逆にたどるのは非常に難しく、発生源の位置については大雑把な情報しか得られていなかった。

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