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「悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト」の驚くべき生涯

7/17(火) 7:31配信

デイリー新潮

 そのミュージシャンの到着を待ち焦がれていた人たちは、コンサートホールに殺到した。

 街には「あやかりグッズ」が溢れ、レストランやカフェには便乗メニューも登場。そのパフォーマンスは人々を熱狂させ、コンサートの様子を伝える新聞では折り重なる観客の姿のイラストが描かれる。コンサートを終え、莫大な収入を手にしたミュージシャンは、次なる街へと去って行く……。

 安室奈美恵の引退コンサートか、EXILEのドームツアーのことかと思われるかも知れないが、これは今から200年前の欧州の話である。
 ミュージシャンの名前はニコロ・パガニーニ(1782~1840)。史上最高にして空前絶後のコンサート・ヴァイオリニストである。

大衆が熱狂した「超絶技巧」

 パガニーニの生涯を描いた本邦初の伝記『悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト パガニーニ伝』(浦久俊彦著)によると、生前の彼の人気はものすごいものがあった。

 当時、ヨーロッパを支配していたナポレオンの妹2人が、パガニーニを奪い合った。姉エリザの宮廷で雇われていたパガニーニを、妹のポーリーヌが自分の嫁ぎ先であるボルゲーゼ家の所領に連れ込んだのだ。
 ウィーンでの初公演の際には、コンサートチケットの代金が5グルデンであったため、5グルデン紙幣が「パガニーナー」と呼ばれるほどに人気が沸騰した。パガニーニの名を冠したハンカチやネクタイ、たばこケースなどが売られるようになり、カフェにはヴァイオリン型のケーキも登場。イギリス滞在時には邦貨換算で80億円相当(! )を1年間のコンサートツアーで稼ぎ出した、とも言われる。

 パガニーニはなぜ、ここまでの度外れた人気を獲得したのだろうか。

 理由の1つは、彼の圧倒的な技量である。
クラシックファンには周知のことだが、パガニーニと言えば「超絶技巧」がトレードマーク。彼が作曲したヴァイオリン協奏曲を聴けば、弾きこなすのに相当なテクニックが必要であることは、クラシックの門外漢であってもわかるだろう。この超絶技巧に大衆は熱狂したのだ。

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最終更新:7/17(火) 15:50
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