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【ハンドボール】“小さな夏の奇跡”の終わり 17人の麻生に残った涙と汗と、底抜けの笑顔

7/29(日) 12:56配信

THE ANSWER

主将、エースの相次ぐ故障を乗り越えて…小沼監督が感じた「新たなチームの胎動」

 電光掲示板の時計が「30:00」を示し、ブザーが鳴った。

 麻生高校 16-27 高岡向陵高校

【写真】17人の“ハンド女子”がインターハイで起こした“小さな夏の奇跡” 麻生高校ハンドボール部写真ギャラリー

 7月28日。全国高校総体ハンドボール女子2回戦。3年前に始まった、麻生(茨城)の小沼嘉樹監督と3年生5人の挑戦が終わりの時を迎えていた。

 応援スタンドへ挨拶に向かう指揮官とキャプテンの高野稀汐(3年)の表情は、敗者とは思えないほど、実に晴れやかだった。

「3年間、楽しかった。このチームのみんながいてくれて、小沼先生が監督でいてくれたことが一番です」と、仲間の輪の中で高野は最後まで満面の笑顔を崩さない。

 あふれる涙と汗をユニフォームで隠す選手たちを静かに見つめながら、小沼監督は嗄れた声でゆっくり語り始めた。

「本当に逞しいチームになりました。今までで一番いいプレーをしてくれました。昨日の試合で、2年生エースの浜田(桃花)が負傷退場するというあれだけのトラブルがあったにも関わらず、それを全く感じさせない底抜けの明るさ。ここに新たなチームの胎動を感じるというか、ここからが船出といいますか、そんな気がしてなりません」

 この1年は、「トラブル」続きだった。

 春の新人戦では県大会で初戦敗退。「同じ悔しい想いをしたくない。全員が私生活からジリツ(自立と自律)を徹底」(高野)し、夏に向けて立て直しを図っていた矢先、チームの支柱、キャプテンの高野が前十字靭帯損傷の大怪我を負う。

「キャプテンがいなくなって、最初は不安だった」(浜田)が、「強いキャプテンでありたい」と自分にできることを献身的に取り組む高野に導かれ、チームは結束。“キャプテンのために”という想いを原動力に、19年連続出場の絶対女王・水海道二を決勝で下し、20年ぶりのインターハイ出場を決めた。

故障2人の姿に奮い立った一戦「ただ挑戦するのみ。あとは楽しむだけ」

 県大会決勝では先制弾でチームに勢いをもたらしたエース浜田には「キャプテンの分も」という責任感が芽生えていた。「キャプテンが試合に出られないと知り、自分がその分も頑張ろうと決めた。心が決まったら『やってやろう』と余計に気合が入りました」

 インターハイ初戦の彦根翔西(滋賀)戦でも、浜田はチーム最多タイの6得点を挙げる活躍でチームを牽引した。しかし、インターハイの舞台でなお、更なる悲劇がチームを襲った。エース浜田が試合終盤に相手をかわした際に左膝を抱えながら倒れ込んだ。担架で運ばれる浜田の姿にチームには動揺が走った。試合は24-16で勝利したものの、あまりにも痛い代償だった。

「今大会では『怪我でプレーできないキャプテンの気持ちを背負って』と言っていたのに、こういう怪我をしちゃって……。チームにも迷惑かけてしまって……」と浜田は涙で声を詰まらせた。

 この日の2回戦、高岡向陵(富山)戦のベンチ。高野主将の傍らには、左膝を固定した松葉づえ姿の浜田がいた。その気丈な姿にチームは奮い立った。

「気持ちを切り替えて、ただ挑戦するのみ。あとは楽しむだけ」(高野)と、開始早々からエンジン全開。先制されるも、麻生らしい機動力を生かした攻撃で食らいついた。

「キャプテンがインターハイ前に怪我をして、昨日は桃(浜田)が怪我したこともあったし、先輩たちがこの大会で引退なので、今日は今まで以上に気合いが入りました」と話していた根本美優(2年)は、倒れ込みながら1点目を押し込んで、チームに勇気を与えた。最後は脚が攣ってしまうほど、アグレッシブなディフェンスから何度も鋭い速攻を繰り出し、エースの穴を埋める7得点の奮闘を見せた。

 1年生の千葉楓に先発の座を譲り、悔しい思いをしてきた3年生GKの菅原詩織も、相手エースの7メートルスローを防ぐなど、攻守にわたり粘り強く戦ったが、最後はセンバツ優勝経験を持つ強豪・高岡向陵の前に力尽きた。

 小沼監督は試合を振り返り、「相手の方がひとつひとつの実力が上だった。その積み重ねがこういう結果になったのかな」と悔しさを滲ませながらも「自分たちのハンドボールを信じてやれば、またここに戻って来られる気がします」と確かな自信を口にした。

 インタビューに答える小沼監督の横では、流れる涙を止めることができないチームメートを高野主将がおどけて笑わせていた。麻生高校女子ハンドボール部は、どんな時も底抜けに明るい。

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最終更新:8/2(木) 11:48
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