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「あなたは発達障害です」と言ってほしい女性たち…完璧主義の生きづらさ

8/5(日) 18:00配信

週刊女性PRIME

 現在、発達障害の専門外来では、予約から診察まで3か月待ちは当たり前といった状況が続いているという。わが子の行動やコミュニケーションに不安を抱く親たち、また仕事や人間関係の尽きない悩みに原因を求めるおとなたちが列をなしている。

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『「発達障害」と言いたがる人たち』(SBクリエイティブ)の著者であり、精神科医の香山リカさんに、現代の生きづらさの原因を「発達障害」に求める人たちの心理と時代背景について聞いてみた。

「片づけられない私」「空気が読めない私」

 ここ7、8年ほど、診察室に時折こう訴える人たちがやって来るようになった。多くは女性だ。

「私、発達障害なんじゃないでしょうか。たぶん注意欠陥障害(ADD)か注意欠陥多動性障害(ADHD)だと思います。あ、コミュニケーションも苦手だから、アスペルガー症候群の可能性もあるかもしれません」

 最初の頃は私も、「子どものうちには見逃され、おとなになってからはっきりする発達障害も多いらしい。この人もその可能性が高いのではないか」と考えて、問診を進めていた。

 精神科医の市橋秀夫氏は、論文で「わが国ではADD/ADHDの児童期受診率は低く、成人になって受診に至るケースが多い」と述べている。なぜなら、この人たちは「社会人となってから時間管理、正確さと速度、同時並行作業や情報の綿密性を要求されて事例化すると考えられる」からと言う(「注意欠如性障害者の生きにくさの源泉──社会・文化的枠組みからの考察──」『精神科治療学』第25巻07号 2010年7月)。相談に来る女性たちもこれと同じケースなのだろうか、と私も考えたのだ。

 診察を始めるとすぐに、彼女たちにははっきりした受診のきっかけがあることがわかる。彼女たちの多くは米国のカウンセラーであり自らもADHDだというサリ・ソルデンが書いた『片づけられない女たち』(WAVE出版〈2000年〉)というベストセラー本を読んでいた。「整理整頓が苦手な人はADDやADHDの可能性があるというこの本を読んだり、その内容を紹介するテレビ番組を見たりして「私もそうかも」と来院した、というのだ。

 同書は、従来は子どものみに見られ、かつ男性が大半を占めると考えられていたADHDに、実は「女性の成人型」が少なくない、とわかりやすく解説した本である。原書は1995年にアメリカで刊行されており、そのタイトルはシンプルに『Women with Attention Deficit Disorder』(直訳すると「ADDの女性たち」)なのだが、邦訳版が出るにあたって、中で取り上げられている「部屋の整理が苦手である」という特徴に焦点をあてた『片づけられない女たち』というタイトルがつけられた。これが日本でベストセラーになった大きな理由と考えられる。

 また、この本が売れていることなどを取り上げるテレビ番組の中には、同じ発達障害の中に「知的には問題はないが“空気”が読めず、ひとつのことにこだわりが強いこと」を特徴とする「アスペルガー症候群」というタイプもある、と紹介されていることが少なくないようだった。外来を受診した女性たちは、それらを目にして「自分のことではないか」と思い込み、診断を求めて来院したのだ。

 この「成人型のADHD」は診断ガイドラインが確立しているわけではないので、子ども時代の様子なども振り返ってもらいながら話を聴くと、学校時代はとくに問題もなかったどころか、あるいは優等生や生徒会長だったという人がほとんどだった。

 では、その「片づけられない」というのがどの程度なのかと尋ねても、「もう春なのにまだ冬物のコートが出しっぱなし」「家族で食事をした食器を翌日まで洗わない」など、さほど深刻ではないことがわかる。「書類をすぐに提出できずに溜まってしまう」といった仕事上の支障について語る人もいるが、それでも会社勤めを続けていたり、中には役職に就いていたりするところを見ると、「どちらかといえば苦手」という程度なのではないか。

 診察の範囲では、この人たちにはADD、ADHD、アスルペルガー症候群などと診断されるような発達の障害は感じられず、むしろ何ごとも完璧にしないと気がすまない、理想の自分でないと許せない、という完璧主義的な性格が問題であるように思われた。

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最終更新:8/5(日) 18:00
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