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もはや自衛隊に装甲車は不要な理由

8/7(火) 6:10配信

JBpress

 7月27日、防衛省は陸上自衛隊の次期「装輪装甲車」の開発中止を発表した。

 本稿では、まず陸自が断念を発表した背景を説明し、その上でそもそもこの種の装備自体が日本の戦略と戦略・作戦環境からして無用の長物であり、税金の無駄でしかないことを指摘したい。

【写真】開発が中止になった次期装輪装甲車

■ 新型装輪装甲車が“欠陥品”扱いされた理由

 陸自が次期装輪装甲車の開発を中止した理由は、開発を請け負った小松製作所(以下「コマツ」)が脆弱な防弾装甲しか作れなかったというのが公式の説明である(参考:コマツのプレスリリース「防衛省開発事業 装輪装甲車(改)試作研究事業中止に関するお知らせ」)。

 実は、かねてより陸自内部ではこの装輪装甲車はポンコツ扱いされ、率直に言えば悪評ふんぷんであった。

 その理由の第1は、そもそも開発費が安すぎたことである。コマツは20億円という圧倒的な低価格で開発プロジェクトを応札したが、これがいけなかった。とても新型装輪装甲車の開発と試作車両の複数生産ができる価格ではなかったため、いろいろな無理が出てしまったのである。

 第2は車高が高すぎたことである。例えば、米軍が採用しているストライカー装輪装甲車は2.64メートル、独軍のボクサー装輪装甲車は2.37メートル、中国軍の08式装輪装甲車は2.1メートルである。しかし、次期装輪装甲車は2.9メートルである。しかもRWS(遠隔操作式砲塔)を載せれば3メートルを優に超す“高身長”になってしまう。

 高身長の理由の1つは、中東で猛威を振るった路肩爆弾(砲弾等を地面に埋め込み強力な地雷とする)対策だという。つまり爆風を逃がすよう底をV字型にしたため、と言われている。だが、ストライカーは底をW字にすることで車高を低くしているのだから、何の言い逃れにもならない。

 では車高が高いと具体的に何が問題なのだろうか。1つは野戦であれ市街戦であれ、車高が高いと暴露率を上げるからである。ある幹部は「あれでは敵に見つかりやすく危険すぎる」と指摘したが、確かにそうだろう。単純な例としては、中国軍の08式装輪装甲車と次期装輪装甲車が接近すれば、先に後者が発見され撃破されてしまうということだ。

 もう1つは輸送のリスクである。陸橋の車高制限に引っかかったり、輸送機で空輸できない場面が出てくるのだ。例えば自衛隊が主力として使用しているC-130輸送機は貨物室が2.74メートルなので、次期装輪装甲車は入らない。いまだ8機しかないC-2輸送機でしか空輸ができないのである。

■ そもそも日本に装甲車は必要か? 

 このようにコマツが開発を請け負った次期装輪装甲車は問題だらけであった。防衛省は開発をやり直すか、海外からの購入を検討するとしている。

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最終更新:8/8(水) 9:40
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