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清原和博、告白の始まり。「人生、どこからおかしくなった……」

8/9(木) 18:01配信

Number Web

『Number』誌上で1年間にわたって連載された『清原和博 告白』が単行本となった。
 清原氏が自らの半生を振り返り、鬱病、薬物依存とたたかう現在を綴った1冊は、大きな反響を呼んでいる。
 本書には、岸和田リトルで野球を始めた頃から、甲子園の栄光、ドラフト事件、激動の現役時代、そして選手引退後の喪失感や覚醒剤のことまでが、ありのままに記されている。
 かつて多くの人の心を引きつけたヒーローは、なぜ堕ちてしまったのか? 
 人をこんなにも変えてしまうものは、何なのか? 
 これは、どうしようもない、人間らしさの記録である――。
『清原和博 告白』にいたる経緯をお伝えすべく、単行本に寄せた序文を全文公開する。

【写真】清原和博、高3の夏。甲子園で感極まった瞬間。

 車の中を沈黙が支配していた。

 運転手が出すウインカーの「カッ、チッ、カッ、チッ」という音が妙にはっきりと聞こえていた。窓ガラス越しに流れていく都心の景色をぼんやりと眺めながら、私たち3人は押し黙っていた。

 あえて話さないのではない。言葉が出てこない。そういう類の沈黙だった。

 2017年5月、初夏を思わせる陽射しの強い日に、私は、Number編集長(当時)・松井一晃、次長・薦田岳史とともに清原和博氏に会った。

 覚醒剤取締法違反で逮捕された後、初めてのインタビューであり、私にとっては電話で話したことがあるだけで、清原氏と顔を合わせて話すこと自体が初めてだった。

「捜査員みたいですね」

 都内ホテルの一室。

 ほぼ約束の時間ぴったりにドアが開いた。黒いスポーツウエアに身を包んだ巨体が入ってきた。清原氏だった。ただ、私がこれまでに描いていたイメージと目の前にいる人物とは大きく異なって見えたし、明らかに様子がおかしかった。

 入ってくるなり、そわそわと室内を見渡すと、松井や私が着ていた黒いスーツを見て、威嚇するようにこう言った。

 「捜査員みたいですね。なんか……、取り調べみたいですね」

 私たちは一瞬、身を固くしたが、よく見ると、清原氏の手は小刻みに震えていた。何より、決して我々と視線を合わせずキョロキョロと宙へ逃げる、その瞳が怯えていた。

 目の前にいたのは、私たちの知っている清原和博ではなかった。変わり果てた、英雄の“抜け殻”だった。

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最終更新:8/9(木) 18:56
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