ここから本文です

欧州で珍重されたセイウチ牙、意外な産地が判明

8/10(金) 19:16配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

科学者が驚いた結果、博物館のセイウチ牙のDNAを調査した

 今から1000年前、ノース人と呼ばれる北欧の人々は、氷に閉ざされた辺境の地グリーンランドまで足を延ばし、定住していた。当然ながら、楽に生活できる環境ではない。彼らはなぜそこにとどまり、どのように生き延びたのだろう?

ギャラリー:生きているセイウチの写真13点

 考古学者を長らく悩ませてきたこの謎に、一つの答えが示された。

 農業と漁業で生計を立てていたノース人には、もう一つ、重要な収入源があったというのだ。彼らはヨーロッパ市場を相手に貴重なセイウチの牙を取引していたらしいとする論文が、2018年8月8日付け学術誌「英国王立協会紀要B」に発表された。

教会の装飾やチェスの駒に

 セイウチの牙は中世初期のヨーロッパで、北方のエキゾチックな素材として珍重されていた。多くの教会がこの牙を装飾に使い、金持ちたちは牙に細かい彫刻を施し、チェスの駒にした。しかし最近まで、これらの牙がどこから来たのかはっきりわかっていなかった。近場のスカンディナビア半島周辺の海だろうか、それとも、もっと遠いグリーンランドの向こう側(西側)の海だろうか?

 そこで今回の研究が手がかりにしたのは、セイウチのDNAだ。アイスランドやスカンディナビア半島周辺のセイウチと、グリーンランド西岸やカナダのセイウチはDNAがわずかに異なる。研究チームはヨーロッパ全域の美術館や博物館でセイウチの牙やその加工品を探し、DNAを調べることで、その出身地を特定した。

 結果は驚くべきものだった。

 ヨーロッパでコレクションされているセイウチの牙のうち、1100年代までのものはほぼすべて、近場である東の海域でとれたものである可能性が高い。具体的にはバレンツ海やアイスランド、スバールバル諸島などの海域だ。

 しかし、その後の数百年、西暦1400年ごろまで、牙の出どころははるか遠くの西側の海域のものに変わっていた。これはグリーンランドに定住したノース人が、ヨーロッパと牙を取引していたことを示唆している。

 研究を率いたノルウェー、オスロ大学の古代DNA専門家バスティアン・スター氏は、この地理的な変化は「かなりの驚き」だったと語る。

「ヨーロッパからもアクセスできた東(のセイウチ)が乱獲されたためでしょうか? それとも、グリーンランドからヨーロッパへの移動が経済的になり、貿易の独占が可能になったのでしょうか?」

1/2ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Yahoo!ニュース特設ページ