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子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう見ていられない」と研究者

8/10(金) 19:46配信

ニューズウィーク日本版

3年も子供が生まれなかった弱ったシャチの群れにやっと娘が生まれたが、30分ほど泳いで動かなくなってしまった。それから母の尋常でない悲嘆が始まった

米ワシントン州のオリンピック半島沖で7月24日、死んだ我が子を連れて泳ぐ母シャチの姿が確認された。母シャチはJ35または「タレクア」と呼ばれている。絶滅危惧種に指定されているサザンレジデント・キラーホエールズの75頭いる群れのうちの1頭だ。子を連れて泳ぐその姿は8月8日にも確認され、これで16日目になる。

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タレクアは、亡骸を頭にのせたりくわえたり押したりして運び、海に沈んでいくと潜って連れ帰る。子供が死んでからほとんど餌も口にしていないようで、このままでは、群れにとって貴重な繁殖期の雌であるタレクアまで病気になると、科学者たちは胸がつぶれる思いで母シャチの悲しみようを見守っていると、シアトル・タイムズは伝えた。

「泣けて仕方がない。まだ子供を離さないなんて信じられない」と、ワシントン大学の科学者デボラ・ジャイルズはタイム誌に語った。「J35の身体と心の健康が心配でたまらない」

タレクアと赤ん坊の悲劇は、絶滅の危機にあるこの群れ全体の問題だと、クジラ研究センターの創設者、ケン・バルコムは声明に書いた。

このシャチの群れには、もう10年来、ほとんど子供が生まれなくなっている。タレクアの娘は、一度は生まれてきて母と並んで泳いだが、30分ほどで動かなくなった。30分しか生きられなかった。タレクアは天国から地獄に突き落とされたのだ。

タレクアの娘は、この群れで3年ぶりに生まれた子供だった。群れ全体で過去20年に生まれた子供の75%は死んでしまった。

なぜなのか? 親シャチの栄養不足だ。ここのシャチは年々やせ細っていく、と科学者たちは言う。彼らの主食はキングサーモンだが、あいにくキングサーモンも絶滅しかけているのだという。

環境破壊、気候変動、乱獲、上流で生まれたキングサーモンが海に出る道に立ちはだかるダム。そうした人間の行いが廻り廻って、タレクアのような母シャチと子供を破壊した。

死んだ子供からなかなか離れない哺乳類は少なくない。しかし2週間を超えるタレクアの悲嘆はけた違いだ。このままでは種が全滅するというのもわかっているかのようだ。

科学者や研究者は、シャチにビタミン剤を与えるなど、できることはやっている。キングサーモンの量を増やすために、ダムを通れるようにすることも。間に合ってほしい。

キャサリン・ハイネット

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