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「エージェンシーという組織は、まったく効率的ではない」:あるエージェンシー中堅幹部の告白

8/11(土) 8:10配信

DIGIDAY[日本版]

広告業界には社内政治がはびこっている。大手エージェンシーでトップの役職に就いていない社員は、雇用の問題や昇進見込みの少なさ、全般的なプレッシャーなどに不満を感じている。

匿名を条件に本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、エージェンシー系の一流持株グループで働く、中堅幹部から話を聞いた。同氏の口からは、幹部連中は友人を雇うのをやめるべきだ、全体的にマーケターはもっと給料をもらうべきだ、などの本音が飛び出した。

なお、読みやすさを考慮し、以下の会話には若干の編集を加えている。

――エージェンシーという組織は効率的だと思うか?

まったく効率的ではない。すべてのチームが大きな利害の対立を抱えている。クライアントチームは自分たちがクライアントだと思っている。だが、それは違う。彼らが料金を支払っているわけではないのだから。トレーディングチームはどこも、手数料収入を最大化したいと思っている。どんなキャンペーンにも不確定要素は多数あり、それがヒューマンエラーのリスクを生み出している。

メディアプランを例にとってみよう。クライアントの気がコロコロ変わり、そのプランを10回もつくり直す羽目になることもある。どんなメディアプランが正解なのか、誰にもわからない。休暇から仕事に復帰したり、会議に参加したり、しなかったりする人もいるかもしれない。メディアプランやクリエイティブ、トラフィックなどに何度も変更が加えられ、これが浪費の原因になる。キャンペーンで予算をオーバーしたことのない大手エージェンシーなど、1社もないのでは。

――雇用については? 公正だと思うか?

能力ベースの場合もあるが、この業界には「紹介文化」が根づいている。誰もが友人を再雇用したがる。その方が、知らない人物を雇う危険をおかすよりも簡単だし、安上がりだからだ。世界最大のメディアオーナーはFacebookとGoogle、Amazonだ。この3社が業界でもっとも重要なメディアオーナーであるなら、デジタルの世界で戦略的にもっとも重要な仕事は、検索のトップとソーシャルのトップ、プログラマティックのトップだ。こうしたポジションに就いている人たちは誰も似たり寄ったりで、ほとんど常に自分の友人を雇ってきた。

LinkedIn(リンクトイン)を覗くと、まったく同じような人物やプロフィール、風貌が表示される。これが公正と言えるだろうか? 誰もが似たり寄ったりだと、私はいつも不安を覚える。若手レベルでは、女性や少数派の民族が大幅に増えており、多様性はぐっと高まっている。だがトップレベルでは、何も変化は起きていないように思える。

――昇進するための唯一の方法は、退社することだとも、一部では言われている。あなたもそう思うか? それとも、社内での昇進もあるのか?

エージェンシーに5年間在籍しているという人と会うたび、いつも私が思うのは、必要なのは運やタイミングだということだ。私と、他社で私のポジションに就いているほかの誰かのあいだに、実質的な違いはない。昇進するためには、それを後押しするだけの売上が必要だ。それが新規の事業であれ、担当している得意先の顧客ベースの拡大であってもだ。私は2年ごとに、みんなに言っている。社内での昇進をめざすか、新たな役割を探すかしろと。エージェンシーは全力をあげて、優秀な人材の確保に努めるべきだ。もっとも先進的な市場にさえ、優れたデジタルの人材は多くはいない。

――評定についてはどうか? あなたは会社にフィードバックできる立場にあるのか? 実際に何か変化はあるか?

昇進制度は、私がこれまで目にしてきたもののなかで、間違いなくもっともくだらない茶番劇だ。素晴らしい才能に恵まれたスタッフが辞めていくのを私は何度も見てきた。彼らは最高の仕事をしていたからだ。

以前、私の3階層下に、本当に有能なスタッフがいた。私の休暇中には、彼が私の仕事をしてくれていた。KPIもすべてクリアしていたし、クライアントも彼のことをとても気に入っていた。けれども社内では、誰も彼の意見に耳を傾けなかった。だから彼は別のエージェンシーに移った。そのスタッフの優秀さを示す確固たる証拠があり、それが一目瞭然なら、そんな優秀な人材を流出させてはならない。こんなものは能力ベースからかけ離れている。

――あなた自身は退社したいか?

現在は、いまのエージェンシーが新規ビジネスを勝ち取るのを待っているところだ。だが私は、「市場テスト」を行うためにも、少なくとも年に1度は面接を受けるべきだと、いつも人々に言っている。とどまって、このような持株グループのひとつに忠誠を誓うべきではない、と。

――もし自分がCEOだったら、どうする?

1)新入社員の給料を増やす:とりわけ、大手のクライアントを担当する一流持株グループの若手バイヤーなら、デジタルで500万~1000万ドル(約5億5000万~11億円)もの大金を扱うことになる。しかし彼らの場合、2万5000ドル(約270万円)の年俸がもらえれば、まだマシなほうだろう。もし給料がよければ、それだけ優秀な新入社員を獲得できる。その気になれば、シニア連中に払っている給料から捻出できるだろう。銀行のトレーダーなら、卒業してすぐに年収10万ドル(約1100万円)を稼いでいるはずだ。

2)多様性:不言実行。若手社員の多くは女性や少数派の民族だ。だが上に行けば、白人の男性・女性ばかりだ。これでは筋が通らない。能力にもとづいて女性や少数派の民族も出世できる道を切り開くべきだ。

3)人材の確保:雇用ではなく、人材の確保を重視する。この業界の離職率は異常だ。大手クライアントのビジネスを1人で担当させられているスタッフも時折いる。これでは続けようがない。また、とりわけエージェンシーに支払われている料金を考慮に入れると、こんなやり方がフォーチュン500にランクインしているクライアントに適しているとも思えない。奇妙なことに、この業界には素晴らしい役得がたくさんある。スタッフのことをもっと気にかけていたら、うんざりするようなどこの誰かを再雇用するよりも、慰留するのは簡単だろう。

Kerry Flynn (原文 / 訳:ガリレオ)

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