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過去2年で最大規模のIPOとして話題沸騰の「中国鉄塔」。上場で目指すは、世界最大の5Gネットワーク

8/11(土) 8:40配信

HARBOR BUSINESS Online

 2018年8月8日、中国の北京市に本社を置く中国鉄塔が香港証券取引所に上場した。中国では数字の8が好まれ、中国鉄塔にとって8が並ぶ縁起のよい日に上場を果たした。調達額では世界的にみて過去2年で最大規模の新規株式公開となったが、中国鉄塔の知名度はあまり高くないだろう。果たして、中国鉄塔とはいかなる企業で、資金はどのように使われるのだろうか?

⇒【画像】コンクリート柱も中国鉄塔の資産(遼寧省丹東市)

◆中国の通信会社3社によって作られた

 中国で全面的に電気通信事業を手掛ける事業者としては中国移動通信(中国移動)、中国聯合網絡通信(中国聯通)、中国電信が存在し、3社はまとめて三大通信運営商と呼ばれる。いずれも中国の国有企業で、三大通信運営商が保有する資産は国有資産となる。

 携帯電話用の電波を送出する基地局など電気通信事業に必要な通信設備は3社が個別に運営していたが、設備投資の効率化や国有資産の効率的な管理を目指し、3社が新会社を設立して基地局を共同運営する案が出た。

 2014年3月~4月には議論が本格化し、国務院(日本の内閣に相当)の直属機関である国務院国有資産監督管理委員会や電気通信分野の規制などを担う政府機関の工業和信息化部も交えて新会社の設立に向けて調整が進んだ。

 そして、2014年7月15日に三大通信運営商が出資した中国通信設施服務を設立された。

 設立時の出資比率は中国移動が40.0%、中国聯通が30.1%、中国電信が29.9%である。社名は2014年9月11日に中国通信設施服務から現在の中国鉄塔に変更された。

 三大通信運営商は2015年10月14日に中国鉄塔への基地局の譲渡を発表した。

 中国鉄塔は基地局の対価を現金と新株で支払い、同時に中国国新控股が中国鉄塔の新株を現金で取得して出資する計画も発表した。なお、中国国新控股は国務院国有資産監督管理委員会が設立した企業で、国有資産の監督管理を主要事業とする。

 2015年12月31日に三大通信運営商と中国国新控股に対する新株発行が完了し、出資比率は中国移動が38.0%、中国聯通が28.1%、中国電信が27.9%、中国国新控股が6.0%となった。中国鉄塔に出資する4社は国務院が監督管理する中央企業で、中国鉄塔は中央企業に含まれないが、いずれも実質的に国策企業である。

◆中国の巨大携帯電話市場で基地局ビジネスをほぼ独占

 三大通信運営商が基地局を譲渡後、基地局は中国鉄塔の資産となり、基地局の運営や三大通信運営商への基地局のリースが中国鉄塔の主要事業である。

 中国では2018年6月末時点で携帯電話サービスの加入件数が約15億件(日本は同時期で約1億7千万件)に達し、加入件数ベースでは世界最大の携帯電話市場だ。そこで基地局の運営とリースをほぼ独占する中国鉄塔の事業規模は極めて巨大である。中国鉄塔は三大通信運営商からのリース料が主な収入源で、2017年通期の売上高では三大通信運営商からの収入が99.8%に達した。事業内容から急速な規模拡大や成長は期待できないが、引き続き大規模で安定した収入を期待できる。

 そんな中国鉄塔だが、中国でも一般消費者の認知度はあまり高くない。中国鉄塔にとって直接的な顧客は三大通信運営商であるため、それは当然とも言える。三大通信運営商は中国鉄塔の資産を用いて一般消費者に携帯電話サービスを提供するが、大半の一般消費者はそれを意識しないだろう。

 基地局にはさまざまなタイプが存在するが、比較的大型の鉄塔には所有者の社名を掲示することが多い。旧所有者の社名が未撤去の場合もあるが、中国鉄塔の社名が掲示された鉄塔を見れば中国鉄塔の事業内容を理解しやすいかもしれない。都市部などに多いコンクリート柱なども中国鉄塔の資産で、大型の鉄塔以外は社名を掲示しないことが多いが、実は中国の街中には中国鉄塔の資産が溢れている。

◆巨大上場だが、中米間の摩擦がネックに

 中国鉄塔は2018年5月14日付けで上場の申請を香港証券取引所に提出し、2018年8月8日に予定通り上場を果たした。

 上場前に公開した計画書では公開価格の仮条件は1株あたり1.26香港ドル~1.58香港ドル(約17.83円~22.35円)で約431億株を売り出すとし、調達額は最大で680億香港ドル(約9,620億円)を超えると期待された。しかし、公開価格は仮条件の下限となり、調達額は543億香港ドル(約7,682億円)にとどまった。

 実質的な国策企業ゆえに人気が高まらず、また電気通信分野で主導権の掌握を狙う中米間の摩擦が不安視された。米国政府が米国企業に対して中国企業との取引を制限した場合、部品や特許を含む技術の取引が困難となり、中国鉄塔の事業にも影響を及ぼす可能性があるとの見方だ。

 中国の中興通訊(ZTE)はすでに事業再開したが、米国政府の制裁で米国企業との取引を禁止されて事業停止に追い込まれたように、中米間の摩擦は中国鉄塔を含めて中国の電気通信分野の企業にとって不安材料だ。それでも、中国鉄塔は過去2年で最大規模の新規株式公開となった。

 ちなみに、上場後の出資比率は中国移動が28.5%、中国聯通が21.1%、中国電信が20.9%、中国国新控股が4.5%、H株株主(※香港市場から投資を行っている株主)が25.0%である。

◆上場して目指す世界最大の「5G」ネットワーク

 中国鉄塔は上場で調達した資金を主に基地局の増設や新たな基地局への交換、国策として研究開発を推進する次世代通信規格の第5世代移動通信システム(5G)への投資に使う。

 調達した資金の60%ほどを基地局の増設や新たな基地局への交換に投じる方針で、5Gに対応した基地局の整備を加速させる見込み。三大通信運営商は2020年までに5Gを商用化する計画で、世界最大規模の5Gネットワークを構築するために中国鉄塔は大きな役割を果たすと期待されている。

 また、基地局にカメラや観測装置を設置するなど、基地局を利用した新規事業の開拓も計画している。すでに刑務所付近の基地局にカメラを設置して監視するなど限定的に新たな試みにも着手しているが、そのような試みを拡大して収益基盤のさらなる拡大を図る。

<取材・文・撮影/田村和輝>

たむらかずてる●国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報に精通。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ

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