ここから本文です

広島のパトリックはPK1つでも貪欲。Jで勝負する外国人FWに学ぶこと。

8/11(土) 8:01配信

Number Web

 海外でスタジアム巡りや草サッカー見物をしていると、サッカーで道を切り拓こうと国を飛び出した若者に出会うことがある。

 例えば10年前には、イタリアのシチリア島でブルガリアからやって来た15歳の少年に出会った。

 もう名前は忘れてしまったが、森本貴幸の取材で訪れたカターニアの練習場で声をかけられたのだ。

 ブルガリアの若者がカターニアにいたのは、練習に参加するためだった。

 自分でプレー映像を編集してイタリアのクラブに片っ端から送りつけ、カターニアから練習への参加を認められたという。

 親類縁者からお金をかき集め、カターニアに単身乗り込む。だが、タクシーで練習場にやって来たものの、英語がまったく通じず、知り合いもいないので途方に暮れてしまった。

 そんな彼の目の前に、日本人の記者が現われたのだ。

 「だれか関係者を呼んできてほしいんだ。ぼくは今日、練習に参加しなければいけない」

 事情を聞いた私は、正直「面倒だなあ」と思いながらも、クラブハウスにいたスタッフを呼んできて引き合わせてあげた。その後、彼がどうなったかはわからない。

 世の中には、ひと旗上げようと異国に打って出るたくましい若者がたくさんいる。

マリノス相手に見事な2ゴール。

 もちろん、Jリーグも無縁ではない。

 先日もニッパツ三ツ沢球技場で、「外国人らしいなあ」と思うゴールを見た。決めたのはパトリック。首位を走るサンフレッチェ広島のブラジル人ストライカーだ。

 8月1日、広島は敵地・三ツ沢で横浜F・マリノスに4-1と快勝。パトリックは2ゴールを決めた。1点目はPK、2点目はコーナーキックから。

 味方を囮にすることでフリーになり、混戦から頭で押し込んだ2点目も上手かったが、外国人らしいなあと思ったのは1点目のPKである。

青山にPKを譲ってもらって。

 前半終了間際、青山敏弘が上げたクロスを横浜の仲川輝人が不用意にも右手でブロック。これで得たPKをキャプテンの青山敏弘が蹴ったが、横浜GK飯倉大樹に止められてしまう。

 だが蹴る直前に飯倉がゴールラインから前に出ていたため、やり直しになった。この2本目を青山に代わってパトリックが蹴り、落ち着いてネットを揺さぶる。

 試合後に確認すると、パトリックは1本目からベンチに向かって自分が蹴りたいとアピールしたが、青山で行くというベンチの指示を尊重。やり直しの2本目を、青山から譲ってもらった。

 このPKで印象深いシーンがある。それはキックの瞬間でもなく、決めたあとのパフォーマンスでもない。

 横浜の選手たちが審判に抗議する間、ふとゴール前に目をやると、PKスポットにパトリックが立っていた。このときの自分が蹴って当然というかのような表情が、なんともいえずよかった。

1/2ページ

最終更新:8/11(土) 8:01
Number Web

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Sports Graphic Number

文藝春秋

959号
8月16日発売

定価590円(税込)

<夏の甲子園 100回大会記念特集 PART II>
100人のマウンド。

【独占インタビュー】 松坂大輔「奇跡を呼んだ一球」
【独白】 桑田真澄「1年生エースの秘密」